「誰かに脅されていないか?」と銀行員が尋ねたが…
「そろそろ警察の動きもないので、ほとぼりが冷めたんだろう」
2022年5月27日、A子さんは長坂被告に現金3000万円を渡すことになった。「せっかくだから岐阜で1泊したい」と言われ、長坂被告のために金華山が見えるホテルの一室を予約した。
A子さんはゆうちょ銀行で600万円を下ろし、大垣共立銀行で2400万円を下ろそうとしたが、「詐欺師に騙されていないか?」「誰かに脅されていないか?」と銀行員に尋ねられ、警察官を呼んで安全が確認できたら渡すと告げられた。その間、長坂被告とは電話をつないだままでいたので、警察に助けを求めるのは無理だと思った。
自宅に戻ったA子さんは「警察の尾行がないか、安全が確認できたらまた連絡する」という長坂被告からの電話を受けた。その後、安全確認ができたと報告を受け、自宅を出てすぐのマンション前の駐車場で現金3000万円の入った紙袋を長坂被告に渡した。
長坂被告はA子さんを車に乗せて100円ショップに向かい、輪ゴムと茶封筒を購入。宿泊先のホテルに入ってから帯封を外し、輪ゴムで止め直すという作業をするとともに、A子さんに3000万円を渡すという文書を返却し、破って燃やすように命じた。
「ホテルでは温泉に入って、食事をした後、金華山を眺めながら、乱暴な性行為をされた。長坂さんは『岐阜が気に入った。月1回は通いたい。その口実として事業を起こしたい。何か仕事として成り立つ金儲けはないか』と言っていた。翌日は朝一番で東京の会社へ戻って行った」(A子さん)
奪った3000万円は社員に配り、さらに500万円を要求
A子さんから3000万円を受け取った長坂被告は、社員に「好きに使っていいよ」と言って、惜しみなく現金を配ったという。
「元カメラマンの取締役の男に800万円を渡した。あとの2200万円は仕事に使っていいと説明した。私はお金にこだわりがない。東京や静岡に土地建物があるので、1億5000万円~2億円の流動資産がある」(長坂被告)
長坂被告と最後に会うことになる同年6月12日、A子さんは事業の件で何も動いていなかったことから、長坂被告に厳しく叱責された。
「ふざけるな。ご主人様の言うことを聞かないと、ペナルティーを下すぞ。お前の女友達を一人さらってきて、犯してやろうか」
さらにこの日は嚙まれたり、手形がつくほど叩かれたり、首を絞められるといった変態的な性行為を強要された。また、警察の捜査が自分に及んだ場合、迷惑をかけられる恐れがあるということで、「500万円を追加で支払え」と要求された。
だが、ここでも長坂被告の言い分は違う。
「A子さんが『頭では分かっているけれど、Bさんに何かをしたくなる』と言うので、手を出さないように何かガマンさせる方法はないかと考えた。そこで何かをやったら500万円を支払うというペナルティーを科すのはどうかと提案した。とりあえずBさんから離れる必要があったし、警察の捜査も続いている可能性があったので…」
