「なぜ逮捕されるのか分からない」…被告は容疑を否認
A子さんはこれ以降の長坂被告との接触を断り、ようやく冷静さを取り戻したのは同年8月初旬のことだった。「自分の友達まで同じ被害に遭ったらたまらない」と弁護士に相談したところ、「それは非常に悪質だし、やり慣れている印象を受ける」と指摘された。B氏の車にGPSを取り付けた件も話したが、「ここまで来たら、警察が来てからでいいんじゃないか」とアドバイスされた。
警察がA子さんに事情聴取をしたのは、2023年3月のことだった。
「そのときに『3000万円支払う』とか『500万円支払う』というメモ書きが見つかり、事情を聴かれたA子さんが経緯を説明すると、それは恐喝罪に当たるからあらためて被害申告してほしいということになった。警察はBさんサイドにも『付き合いを考え直してください』と要請し、これを機に2人の関係は終わった」(岐阜県警詰め記者)
2024年5月22日、長坂被告はA子さんから現金3000万円を脅し取ったという恐喝容疑で逮捕された。続いて6月11日、A子さんの弱みにつけ込んでホテルに連れ込み、乱暴したという強制性交等容疑でも再逮捕された。長坂被告は容疑を否認し、「とても驚いている。なぜ逮捕されるのか分からない。こちらが聞きたいです」などと供述した。
静岡県湖西市の長坂被告の自宅を訪ねると、母親が対応して次のように述べた。
「健太が女性に乱暴するとは思えない。私も営業をやっていたけど、こんなことで捕まるなら、みんな捕まってしまう。娘(長坂被告の妻)もあきれちゃって、こういうときには署名活動とかするべきなんでしょうけど、『その価値もない』と言っていました。警察と向こうの女性がグルになってるんじゃないかと思うほどです」
最終意見陳述でも被告は否認するも判決は…
かつて長坂被告と元同僚だったジャーナリストはこう話す。
「彼はいわゆる企画モノの記者でした。実用班と言って、お店系の記事などを書いていました。切った張ったのニュース班にいたわけではありません。だから、探偵をするようなスキルがあるとは思えない。
物静かだし、忘年会のときもつるんだりせず、自分の世界に入っている。二次会、三次会にも行かず、いつの間にかいなくなっているという感じです。政治家や警察にツテがあったとも思えない。記者時代はそんなことは何もしていませんでしたから」
1月23日、長坂被告は最終意見陳述で「私は探偵会社を23年やってきた。私の逮捕・起訴はニュースにもなって、会社を続けられず、廃業することになりました。私はこれまで1500人以上の方を担当してきました。A子さんのような不倫の担当、同じような職業の方もたくさんいました。私にもたらされる情報というのは、人生を左右する重要なものです。私を信用して話してくださったものですから、悪用したことはありません。A子さんとの関係は理解できないこともあるかもしれませんが、私は脅していません」と述べた。
岐阜地裁の戸﨑涼子裁判長は「交際相手との結婚をどうサポートするのかというのも不明だし、探偵業とその客に過ぎない被害者が性交することになったというのも不自然」と指摘した上で、「交際相手へのストーカー行為がマスコミの記事になれば、被害者のみならず多くの関係者に影響が及ぶなどと言って恐怖感を与え、被告人と組まなければマスコミに記事を書かせるなどと言って脅し、性交及び口腔性交、3000万円の交付を受けた。
被告人の行為は暴力を伴うものではないが、被害者の弱みを握って、被告人に助けを求めざるを得ないような状況に追い込み、しかもそれを被害者が望んで選択したかのような体裁を取らせる悪質なものである。被害者の屈辱感、恐怖感は相当なもので、人間としての尊敬を踏みにじられた結果は重大。3000万円は恐喝事案の中でも相当高額であるが、被告人は不合理な弁解に終始し、反省もない」と断罪した。
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