――青山氏は自衛隊か米軍が火炎放射器で証拠隠滅した可能性を主張しています。仮にこういう秘密作戦を行ったとして、漏洩を防ぐのは可能でしょうか?

薗田 さっき言ったみたいに墜落地特定すら怪しい中で、どうやって探して降りて証拠隠滅するのとか、どうやって到着するのとか。そうなると、疑われるのはいちばん最初に入った陸自になると思うんだけど、武器払い出し手続きや点検とかどうするのか。

 百歩譲って員数外の装備を持っている部隊がいるとして、でもその部隊の存在を隠し通せるんですかと。かつて、陸幕2部別班という組織がありましたけど、これが知られているのだって、国会答弁で名前が出たからですよ。

ADVERTISEMENT

 愚痴めいた話になるんですが、自衛隊って自分たちの記録を残すのが本当に苦手なんですよね。部内誌とかに書かれても後世の人間がそれを集めるのは大変なんです。

金属疲労痕が見られた日航機の与圧隔壁破断部 ©時事通信社

 今、Webにある情報で一番少ないのが80年代だと思うんですよ。それ以前のものは歴史になっているし、90年代の後半からWebが普及し始めて、そこから先はデジタルアーカイブになっている。要は80年代、90年代は歴史になってない。でも80年代はWebがない。ヒストリカルなデータをデジタル化するのは、80年代が後回しになってしまう。

 僕は123便の陰謀論が流布されるのはそれが背景にあると思ってて、デジタルアーカイブにアクセスしにくい時期だったのも大きいんじゃないかと。これは半分自衛隊に対する批判だけど、その時の運用記録を残せないんですよね。お役所だから大量に文書はあるけど、保管できない、保管する規則がなかったんで、どんどん廃棄されるんです。

©橋本昇

「自衛隊や防衛庁が活動を詳細に総括したものを残していたらここまで陰謀論が跋扈することはなかった」

 国民の自衛隊、のはずなんですよね。故に納税者に対して、いいことも悪いことも記録を残さなければいけないと思うんです。何もなかったことも残さないといけない。それは自衛官となった国民の姿が残されているからです。

 中東に派遣されていた時、基地内の移動で乗った車に、米軍のヒストリアン・セルに大学から派遣されているおじいさんが乗っていました。ヒストリアン・セルは総務担当の士官と大学から予備役が来てて、司令部の活動を秘密も含めて毎日記録しているんです。そのおじいさんは「司令部の秘密も含めてすべて記録に残すし、それはいつ公開されるか分からないけど大事な仕組みだ。これがないと次の戦争に勝てないからだ」と言っていました。

 123便に限らないですけど、自衛隊や防衛庁が活動を詳細に総括したものを残していたらここまで陰謀論が跋扈することはなかったと思いますよ。活動を総括するのは日本人は苦手だと思うんですけど、それをしないと禍根を後世に残すことになるのではないでしょうか。

最初から記事を読む 「自衛隊のミサイルが命中した」「自衛隊標的機が衝突した」…年々盛り上がる「日本航空123便墜落事故」の陰謀論を徹底検証《NHKは「偽動画であり…」と回答》

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。