X(旧:Twitter)でコロナ禍の医療現場の状況や感染対策について発信する一方で、無数の誹謗中傷を受けてきた埼玉医科大総合医療センターの岡秀昭教授(50)。

「不毛な誹謗中傷との戦いを有毛に変える」と宣言して誹謗中傷の投稿者たちを訴え、彼らからの慰謝料で増毛したという岡氏に、誹謗中傷の嵐にさらされたときの様子、家族にまで及んだ危害、警察の対応などについて、話を聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く

岡秀昭教授 ©石川啓次/文藝春秋

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コロナ禍になってから変わったSNSの空気

――X(旧:Twitter)での発信を本格的に始めたのは、やはりコロナがきっかけですか。

岡秀昭(以下、岡) アカウント自体は、かなり前から持っていました。2017年あたりかな。ただ、コロナ禍以前は完全にプライベート用のアカウントで、誰かをフォローしては投稿を見るくらいで。自分からなにかを発信することはほとんどありませんでした。

 開いた当初は、フォロワー数もいまみたいに2万以上なんていなかったですね。そのアカウントは、誹謗中傷で閉じざるをえなくなるんですけど。

岡秀昭教授のXのアカウント

――それまでのアカウントの空気が、コロナ禍を機に変わってしまった。

 そう、2020年になってからです。コロナの第一波から感染した患者さんを診て、メディアからの取材依頼が大学に来るようになりました。当時の病院長から「先生、マスコミの取材を一元的に受けてくれませんか」と言われて。それで感染症の専門家として、医療現場の状況を伝えることになったんですね。

コロナの実態を伝えるために発信を始めたが…

――病院からの要請だったのですね。

 病院の公式的な立場として動いていたわけです。せっかくメディアに出るなら、より多くの人に現場の状況、とくに当時は不透明だったコロナの実態を伝えられたらなと。

 どんな症状が出る感染症なのか。私が実際に現場で見聞きした真実を、自分の言葉で伝えようと思いました。そのツールとして、最も拡散力のあるXを本格的に使いはじめたんです。

――情報の発信が目的だった。

 メディアに出演したさいの内容も拡散したりするうちに、Xのフォロワーはどんどん増えて、以前のアカウントでは8万人近くまでいきました。