「家族まで攻撃対象になった」ネットリンチを受けてXのアカウントを消す事態に

――旅行ぐらい贅沢したいものですけどね。

 泊まってもいない高級ホテルの名前を挙げられ、「ワクチンで儲けた金で行ったんだろ」と。セレブもなにも、飛行機はマイルを貯めたエコノミーですよ。でも、そんなことは関係ないんですよ。写真一枚で勝手なストーリーが作られ、妻の容姿に対する侮辱まではじまった。いわゆる集団リンチの状態です。家族まで攻撃対象になったのを見て、「これはもうダメだ」と。そこで一度、Xのアカウントを消しました。

 それまでは「自分ひとりの問題だから」と耐えられた部分もありましたけど、さすがに家族が巻き込まれたのは許せなかった。

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“ハゲ”と誹謗中傷を受けることも多かったという(写真=埼玉医科大学総合医療センター提供)

――住所も特定されたそうですが。

 僕が書籍の執筆や講演で得た収入を管理するために、妻が代表のプライベートカンパニーを持っていたんです。その登記上の住所が、当時住んでいた自宅のマンションでした。製薬会社が公表している講演料の支払いリストから、その会社名を見つけ出した人がいて。

――そこから住所が割り出された。

 法務局で調べて、自宅の住所を突き止めたんです。そして、うちのマンションの外観写真をネットのマップから転載して、「事務所らしくない建物ですね」「そういえば……〇〇県在住」「節税対策!」と住所であるとわかるように投稿を拡散していました。

 僕が「人の住所を公開するな」と抗議すると、「おまえが自分で登記したんだろう、自爆だ」「公開情報だ」と開き直る。向こうは悪意を持って個人のプライバシーを晒しているんですけどね。

「おまえを殺しにいく」「家に火をつけてやる」と殺害予告も

――身の危険は感じませんでしたか。

 Xで「家に火をつけてやる。おまえも家族もまるこげだ」「おまえの家に遊びに行ってやる」といった投稿が繰り返されました。さすがに怖かったですよ。

 妻も「早く終わらせてくれ」と。子どもたちが学校でいじめられるんじゃないかと心配もしていました。一番つらいのはそこですね。家族に不安を与えてしまうことが。

 

――警察に相談は。

 何度も行きました。でも、警察の対応は驚くべきものでしたね。まず、プライバシー侵害、つまり住所の公開自体は刑事罰の対象ではない、と。「ひどいですね。でもこれは民事不介入です」と言われるだけ。脅迫にあたる投稿を見せても、「これだけではすぐには動けない」と言うんです。

 それどころか、3回目の被害届を出しに行ったとき、警察官にこう言われたんです。「お宅、これで3回目ですよね。先生のほうで自衛してください」と。

 でも、そう言われている間に「おまえを殺しにいく」なんて書き込まれてるわけです。

撮影=石川啓次/文藝春秋

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