刑務所に送られた減刑を求める嘆願書は5000通……。2005年に娘をレイプした犯人と再会後、焼殺による復讐を果たした女性。世論からも同情も多数集まる彼女に科された罪とは? その後、どんな人生を生きたのか? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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「ジューッという音とともに炎があがった」

 ソリアーノ死亡の翌日、殺人罪で起訴されたマリアは裁判所に出廷した。傍聴人の大半は事の経緯を知る地元の人々で、彼女が姿を現すや「ブラボー!」「よくやった!」と快哉をあげた。誰もが彼女の報復行為は親として当然であり、ソリアーノが受けた被害は自業自得と考えていた。

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 まずは検察側の証人として、事件当日、店にいた客の男性がその日の様子を証言した。

「店内は食事をする人でいっぱいでした。私はテーブルに座っていて、ソリアーノさんは私のすぐ近くのカウンターに立っていました。そのとき、女性が入ってきたて、誰にも気づかれずコーヒーを飲んでいたソリアーノさんのところまで歩み寄り、肩に手を置いて、自分の方を向くように彼を振り向かせました。それから彼女は、持っていたボトルを脇の下から引き抜き、彼の上に倒し始めた。

 最初は何が起こっているのかわからなかったが、すぐにガソリンの臭いがしたので、私は飛び上がって彼女を取り押さえようとしました。が、彼女がマッチを擦りジューッという音とともに炎があがり、ソリアーノさんはよろめきながら歩き回った。人々が炎から逃れようと外に駆け出すと、彼女はただ彼を見て、振り返ってから立ち去りました」

 片や、マリア側の弁護人は、彼女が娘のレイプ被害以降、ショックで精神疾患を患っていたことを明らかにしたうえで「被告は二重の悲劇に見舞われた。まずヴェロニカが受けた性的暴行、そして刑務所を出たばかりのソリアーノによる冒涜。被告は計り知れない心の傷を負っています」と情状酌量を求めた。