〈内部告発〉日大会計係が見た運動部のドロ沼

山田 俊太郎 仮名・元日本大学管理マネジメント課会計係

SCOOP!

ニュース 社会 教育

重量挙部「学費詐欺」は氷山の一角だ

「私が重量挙部(ウエイトリフティング部)による『学費詐欺』を告発したのは、学生や親御さんに対して本当に申し訳ないと思ったからです。ようやく難波監督は逮捕されましたが、真の意味で一連の事件が解決したわけではありません。というのも、本来、学費免除の奨学生に対して『授業料』などの名目で学費を振り込ませるというこの手口は重量挙部に限った不正ではないのです。

 大学が調査・公表したように、陸上競技部とスケート部においても同じ手口で学費を騙し取っていたことがわかっています。難波監督が騙し取った金額は2005年以降、少なくとも58名から合計5300万円以上にのぼりますが、陸上競技部では10年間で4417万円、スケート部も7年で2399万2500円の被害が報告されています。大学側も『不法行為』だと認め、全員に返金しているのです。一方で、バスケットボール部などについては、徴収した金について、『幹部の私的使用は認められていません』とし、『不法行為が認められないことを確定致しました』と結論付けています。

 私は、難波監督一人に責任を負わせて、トカゲの尻尾切りでこの問題を収束させてはならないと思います。それではこれまで不当に金銭を徴収された学生や保護者たちが気の毒ですし、日大自体も生まれ変わることができません。だからこの問題を一人でも多くの人に知ってもらいたくて、こうしてお話しすることにしたのです」

 こう語るのは、今年3月まで日本大学の三軒茶屋キャンパスで管理マネジメント課の会計係等として勤務していた山田俊太郎さん(39・仮名)だ。6月10日、警視庁捜査二課は日大重量挙部元監督の難波謙二(64)を詐欺容疑で逮捕。逮捕に至るきっかけを作ったのが、山田さんによる内部告発だった。

山田さん(仮名) Ⓒ文藝春秋

「かつて10万人を超えていた日大の志願者数は昨年7万人台まで落ち込みました。今年はまた9万人台にまで回復しましたが、それも林真理子理事長のもとで徐々に改革が進んでいるという印象があるからでしょう。しかし、かつて田中英壽元理事長が権力の基盤としていた『保健体育審議会』はアメフト部の悪質タックル事件のあとに解体され『競技スポーツ部』となり、さらに『競技スポーツセンター』に改組されましたが、看板をかけ替えただけで悪しき体質はまったく変わっていません。アメフト部は廃部になりましたが、競技スポーツセンターとそれに連なる各運動部(日大では『競技部』)には、いまだに田中派の残党が蠢(うごめ)いている。今回の難波監督逮捕の一件は、はっきり言って氷山の一角です。

研究室に1100万円の現金

 重量挙部は全国屈指の強豪で難波監督も『名将』の呼び声が高かったのは事実です。しかし、彼は大学の教員としては不自然なほどに羽振りがよく、BMWを乗り回し、腕にはロレックス、教授を務める生物資源科学部の研究室には、ドンペリや獺祭などの高級なお酒を並べ、それを客人に振る舞っていた。日大の教員の年収は高くても1200万円程度です。あんな豪勢な生活ができるはずがない。研究室を捜索するとキャビネットには100万円の札束が11本も保管されていた。学生から集めた学費は、スーツや香水、バッグの購入費用、果ては愛車の点検やコーティング代まで、少なく見積もっても年間100万円以上を私的に流用していたこともわかった。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2025年9月号

genre : ニュース 社会 教育