ウッズの後釜を求めた落合。中米に飛んだ森と桂川は1人の打者に目が留まった。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
2011年のペナントレースはお盆を過ぎても先が見えなかった。10年ぶりの優勝へ独走していたヤクルトが停滞し、阪神と巨人が迫っていた。中日はそのわずか後ろで小さな浮き沈みを繰り返していた。
8月半ばの月曜日、私はひとり新幹線の改札に立っていた。夕刻の東京駅には人波がつくり出す流れがいくつもできていて、その中では誰もが同じ速度で同じ方向に進んでいた。ゆっくり歩くことも、立ち止まることも許されないようだった。
私は落合を待っていた。
ゲームのないこの日、落合は18時51分発の「のぞみ59号」で名古屋に入る――夫人との何気ない会話の中で私はそう聞いていた。
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source : 週刊文春 2021年1月21日号