「いまだ成らず　羽生善治の譜」鈴木忠平｜第2回

「あれが私の首を取りにくる」羽生を指し名人米長は予言した。この対局に時代をも賭けるつもりなのか――。

第一章　時代の声　其の二

　群馬県伊香保温泉の旅館「福一」は創業400年の歴史を誇る老舗である。名物石段街の最上部に位置し、西に榛名山、東に赤城山を望むことができる。1994年5月30日、第52期名人戦は第5局を迎えていた。旅館の庭園付き和室の中央には4つの脚がついた榧（かや）の将棋盤が据えられ、それを挟んで和服姿の2人の棋士が座していた。厳かな空気の中、床の間を背にした上座には史上最年長50歳の名人米長邦雄、その向かいには23歳の挑戦者羽生善治。名人戦において最も年齢差のある戦いであった。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

無料ニュースレター登録はこちら法人向けプランはこちら

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版＋雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める！

スクープ記事をいち早く読める
電子版オリジナル記事が読める
解説番組が視聴できる
会員限定ニュースレターが読める

有料会員についてもっと詳しく見る

source : 週刊文春 2023年5月25日号

〈新連載〉「いまだ成らず　羽生善治の譜」鈴木忠平｜第1回

「いまだ成らず　羽生善治の譜」鈴木忠平｜第3回

この連載の記事一覧を見る