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松本人志も「行かない」派  賛否両論の「人間ドック」には行くべきか?

2018/12/26
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デンマークは定期健康診断制度の導入をストップ

 こうしたことから、諸外国では定期的な健康診断を見直す動きが出ています。デンマークでは研究者の説得によって、政府の選挙公約だった定期健康診断制度の導入を取りやめたそうです。

 また、カナダでも伝統的に行われている毎年の健康診断がエビデンスに支持されていないとして、年齢・リスク等に応じた対応に改めることを推奨する報告が2017年に予防医学特別委員会(CTFPHC)によって出されています(独立行政法人経済産業研究所・関沢洋一主任研究員スライド「エビデンスに基づく医療(EBM)からEBPMが学ぶこと」2018年12月14日より)。

 さらには、米国総合内科医会も、過剰な検査や治療を避け、適正な診療を推進する「チュージング・ワイズリー(賢い選択)」運動の中で、「健康な人に毎年の身体検査は大抵不必要で、益よりも害をなすことが多い」と勧告を出しています(Choosing Wisely“Health Checkups”)。

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がん検診・定期健診を受けないのは「賢い選択」かもしれない

人間ドックは「行かない」松本人志さん ©文藝春秋

 明石家さんまさんや松本人志さんが、こうした医学的なエビデンスのことを知っていたかどうかはわかりません。ですが、「がん検診や定期健診は受けない」というのは、「賢い選択」である可能性もあるのです。繰り返しますが、「人間ドックを受けろ」と、他人がとやかく言うべきではありません。

 むしろ日本では、エビデンスを軽視したムダな検査が横行しています。たとえば、がんが増殖すると高くなる「腫瘍マーカー(がんがあると血液中に増える物質)」は、消化器の炎症や喫煙でも高値になったりするので、がん検診としては役立ちません。

 にもかかわらず、オプションのがん検診として有料で実施している人間ドックや健診センターが少なくありません。また、前出の文春の記事などでも指摘しましたが、肝機能検査や心電図検査なども、専門医からムダと指摘されています。みなさんが定期的に受けている検査の中にも、エビデンスのないムダな項目が多いのです。

かかりつけ医を持つことをお勧めします

 なお、誤解のないように付け加えますが、ここで問題点を指摘しているのは、ふだんから「健康」な人に対して行う検診や健診のことです。もし、病気と思われる体の重大な変化やなかなか治らない症状があった場合には、早めに医療機関に行って、詳しく診てもらうべきです。

 その際、注意しなければならないことは、そうした症状や病気があるときには、がん検診や人間ドック、健診センターに行くのではなく、かかりつけ医や各診療科の外来で診てもらうべきだということです。

 がん検診、人間ドック、健診センターは「何も症状がない人」が見てもらうべきところで、そこでは病気の詳しい検査や診断はできません。にもかかわらず、「気になる症状があるから」と検診や健診を受けに来る人がいるそうですが、それは間違いなのです。

 明石家さんまさんや松本人志さんにも、がん検診や人間ドックに行かない代わりに、気になる症状があればすぐ診てもらえ、適切なアドバイスができる「かかりつけ医」を持つことをお勧めしたいと思います。しゅんPさん、過剰な検査や治療をしない良心的なお医者さんをお2人に紹介してはいかがでしょうか。

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