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日本代表・森保一監督は「理想の上司」? 槙野智章と酒井宏樹に聞いてみた

「モチベーションを上げてくれる」森保流チームマネジメント

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「槙野君を中心に良い雰囲気です」塩谷司の証言

 槙野は今大会の登録メンバーのなかで、年齢は上から数えて4番目にあたる。さらに、彼は先のロシアW杯という世界大会でもプレーしている。そんな経験のある選手だが、初戦と3戦目に先発したものの、それ以外はベンチから試合をうかがっている。フラストレーションをためこんでも不思議ではないが、そんな素振りは少しも見せることがない。

 第3戦で決勝ゴールを決めた塩谷司は、こう話していた。

「槙野君らを中心にすごく良い雰囲気で練習がやれていると思います」

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 槙野が率先してそういう雰囲気を作るのは、彼のプロフェッショナリズムの他に、監督が試みる対話の影響もあるはずだ。

 では、具体的にはどのような形で、選手の心の琴線に触れようとしているのか。

酒井宏樹も信頼「森保監督はモチベーションを上げてくれる」

 右サイドバックの不動のレギュラーとして活躍する28歳酒井宏樹の指摘は興味深い。

 昨年の11月のこと。酒井は、このアジアカップのタイトルを取るための戦略について監督と話し合ったことがあった。若い選手の力を引き出し、決勝までの7試合でコンディションや調子を大きく落とすことなく戦い抜くためには、どんな工夫をすべきか、などがテーマだった。酒井は、森保のコミュニケーションのスタイルについてこう解説する。

「監督は選手を尊重してくれます。自分の意見もあるはずですが、まずは選手の意見を聞いてくれる。その上で『こういう考え方もあるよ』と、新たな選択肢を与えてくれるし、選手のモチベーションを上げてくれるんですよ」

普段はフランス・マルセイユでプレーする酒井宏樹。日本代表でのキャップ数も50試合を超えた ©AFLO

 プロサッカー選手というのは、所属クラブがあるものの、個人事業主であり、長くても数年の契約を結ぶだけの不安定な職業である。さらに、野球のように、個人の活躍がはっきりと数字で表せない部分も大きい。

 試合では鬼気迫る表情でボールを追いかける選手でも、グラウンドの外では不安を抱えていることが少なくない。森保監督の見せる気づかいや、選手の考えや意見を尊重するスタイルは、モチベーションを駆り立てるのかもしれない。