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石川さゆり61歳に。「津軽海峡・冬景色」「天城越え」だけじゃない“意外な魅力”

「天城越え」は石川のイメージを壊す曲だった

2019/01/30

genre : エンタメ, 音楽

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 フジテレビの音楽番組『ミュージックフェア』の今年最初の放送(2019年1月5日)では、石川さゆりと矢野顕子による異色のコラボレーションが企画された。なかでも矢野のピアノと、上妻宏光による津軽三味線の演奏で、石川が歌った「津軽じょんがら節」は圧巻だった。

 番組内のトークによれば、石川と矢野は40年近く親交があり、一緒に海外旅行に行ったりもする仲だという。それを聞いて意外な気もしたが、考えてみたら、2人の元夫は高校の同級生なのだった。おそらくその関係から交流が始まったのだろう。

2017年の紅白では紅組のトリとして『津軽海峡・冬景色』を歌った石川さゆり ©文藝春秋

島倉千代子の歌謡ショーを観て「私もこういう人になりたい」

 石川さゆりは1958年1月30日生まれで、きょう61歳の誕生日を迎えた。昨年には、前年に開催したデビュー45周年記念リサイタルなどの成果から、芸術選奨の大衆芸能部門で文部科学大臣賞を受賞、また、大晦日のNHK紅白歌合戦には41回目の出場を果たし、自身の持つ紅組の最多出場記録を更新した。

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 石川は熊本県飽託郡(現・熊本市)に生まれ、小学5年のときに一家で横浜に引っ越すまで当地で育った。小学校低学年のころ、地元の水前寺体育館へ母に連れられて島倉千代子の歌謡ショーを観に行き、自分も大きくなったらこういう人になりたいと思ったという。その後、中学3年の夏休みにフジテレビ主催の「ちびっ子歌謡大会」で優勝したのを機にデビューする。じつはこのとき出場するつもりはまったくなかったが、出る予定だった友人が急に行けなくなったので、興味本位で代わりにエントリーしたのだとか(※1)。優勝からまもなくして、フジテレビの連続ドラマ『光る海』に出演する。歌手としてはその翌年、1973年3月に「かくれんぼ」という曲でデビュー。流行していた白いエンジェルハットをかぶり、アイドル歌手という位置づけだった。

昨年の紅白、やはり紅組トリで『天城越え』を歌った ©文藝春秋

 所属したホリプロの同期には、オーディション番組『スター誕生!』からデビューした1学年下の森昌子と山口百恵がおり、当初は「ホリプロ3人娘」として売り出された。だが、森と山口が次々とヒット曲を出すなかで石川はなかなかヒットに恵まれず、結局彼女ではなく、『スター誕生!』出身の桜田淳子(当時サンミュージック所属)がほかの2人とともに「花の中3トリオ」ともてはやされることになる。だが、彼女はそれにもくじけず、歌手の勉強を重ね、浪曲や民謡、日本舞踊の稽古にも精を出した。そしてようやく歌手デビュー4年目にして、「津軽海峡・冬景色」で初めてヒットを飛ばすにいたる。以後、「能登半島」「暖流」「火の国へ」「天城越え」などが次々とヒット曲となった。