統計不正問題、憲法改正問題、日ロ外交問題、拉致問題など、様々な問題について国会で論戦が繰り広げられている。そこで目立つのが安倍晋三首相の答弁だ。国会の外でのものも含めて、ここ最近の安倍首相の言葉を振り返ってみたい。
疑われる統計不正問題への関与
安倍晋三 首相
「サンプル入れ替えは官邸の意志では全くない」
ロイター 2月18日
「いったん下がれ」
衆院予算委員会 2月20日
統計不正問題について、安倍晋三首相と首相官邸の関与が疑われている。「毎月勤労統計」は2015年に調査対象を入れ替えて賃金のデータが大きく変動した。当時の流れを振り返ってみる。
厚労省は従業員30〜499人の調査対象事業所についてサンプルを全て入れ替える「総入れ替え方式」で調査を実施していた。15年1月の入れ替えに伴うデータ修正では、12年〜14年分で賃金の伸び率がマイナスに転じる月があったため、2015年3月末、中江元哉・前首相秘書官(現・財務省関税局長)が厚労省の宮野甚一総括審議官、姉崎猛統計情報部長(いずれも当時)に「改善の可能性を考えるべき」という「問題意識」を伝えていたことが明らかになった。
同年6月、厚労省は調査方法を見直すための「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を発足。中江氏は同年9月14日に姉崎氏らと面会し、検討会の議論の内容について報告を受けていたことを認めた。中江氏は当初、「検討会を始める報告を受けた記憶はあるが、検討結果は報告を受けた記憶はない」と述べ、首相官邸の関与を否定していた(時事ドットコムニュース 2月20日)。
9月14日の厚労省担当者メールが焦点に
厚労省に保管されていたファイルによると、9月14日午後2時1分時点では「総入れ替え方式が適当」と記載されていたが、同日午後10時33分時点では一転して「サンプル入れ替え方法は引き続き検討」との表現に変わっていた(時事ドットコムニュース 2月21日)。しかし、姉崎氏は調査手法の変更を指示したのは9月14日に中江と面談する以前だったと述べている(ロイター 2月22日)。
総入れ替え方式よりサンプルの部分入れ替え方式は賃金水準が高く出る傾向がある。安倍首相は18日の衆院予算委員会で「サンプル入れ替えは官邸の意志では全くない」「統計をいじって大きく見せようとしたことは全くない」と強調していた(ロイター 2月18日)。
9月14日に厚労省担当者が検討会で座長を務める中央大学の阿部正浩教授にメールを送っていたことも明らかになっている。阿部氏は8月の段階で「総入れ替え方式で行うことが適当」と表明していた(毎日新聞 2月20日)。20日の衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭代表代行は、このメールについて根本匠厚労相に質問した。
ところが根本氏はしどろもどろ。長妻氏が「中身は?」と問うと、安倍首相から根本氏に「いったん下がれ」という声が飛び、根本氏は「いったん戻ります」と言って答弁をやめて自席に戻ってしまった。長妻氏は「総理、『いったん戻れ』という指示はおかしいですよ」と反発。野田聖子・衆院予算委委員長も注意を行った。根本氏が思わず何か言ってしまうことを安倍首相は恐れたのだろうか?
結局、根本氏は「委員以外の関係者から『部分入れ替え方式を検討すべきではないか』との意見があったと、阿部座長に連絡した」と答弁。この関係者について「中江氏のことだと思われる」と語った(時事ドットコムニュース 2月20日)。統計不正問題についての追及は今後も続く。