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山本 一郎
2017/01/26

高齢化問題は、実は「30代と40代の問題」なんだぞ

これ、ほんとどうすんだ

 先日44歳になり、心技体揃った見事なおっさんへと成長した私ですが、いわゆるひとつの中年男性って置かれている立場が弱い割に責任重大なんですよ。上の世代はどうにかしないといけないし、下の世代により良い社会を引き継がないといけないし、稼いでいい暮らしをして、趣味にカネを使って文化を支え、老後に備えて蓄えなければならない。

 そして、高い税金を払い、保険料を納める。否応なく。なんでか? 社会を維持するためですね。それも、日本をここまでの先進国にしてくれた、功労者である高齢者の暮らしを維持する費用が馬鹿にならなくなってるんですよね。

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 だいたい月に2、3回、地方自治体や地方で活躍する企業の方とかに呼ばれて高齢化問題について講演することがあるんですが、だいたい7割がた客席を埋めているのは40代の働き盛りな男女と75歳以上のお年寄りなんですよ。50代から団塊の世代の方は、意外とお越しにならない印象です。理由は良く分かりません。

 実際、高齢者に向かって高齢化問題を話すなんて、まるで「お前ら早く死ね」って言っているみたいじゃないですか。まあ実際、高齢者が早く死ねば高齢化問題なんて無くなるわけですが。言われてみれば、環境問題も財政破綻も核戦争も人間がいなければ起きないことなんだから、みんな死ねばいいんだ。いや、死にたくない。しかし、時間は残酷だ。若いころは怪力で鳴らした住職も可愛いあの子も老けていく。誰だよ住職って。健康優良児で元気に土木作業をやってた人も、コンビニの前でタムロってしゃがんで弁当食べてる人も等しく老いて、でも地域に子供の数が増えなかったら過疎化や高齢化が進むのは当たり前ですね。高齢化を見て政府が悪い、社会が悪い、指導者が悪いと誰かのせいにしても、お先真っ暗な事実は1ミリも動きません。困ったものです。

未来が暗い話をすると喜ぶ高齢者が多い件について

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 でも、こちらが「少し言い過ぎたかな」ぐらいの暗くて衝撃的なお話をして、一番喜んでいただけるのは実は75歳以上、80代から90代のお爺さん、お婆さんがたです。「よく言ってくれた」と。貴方たちの町は無くなりますよ、若い人たちが地元を捨ててみんな都会にいってしまいますよというと、手を叩いて喜ぶ人もいます。マゾなんでしょうか。口々に「どうせ俺らは先に逝くから」と、あとはよろしくな精神を発揮される快活な方ほど、ストレスがなくて長生きされるのかもしれませんが。

 そして、だいたい講演が終わると宴会になるわけですよ。ビール片手に佇んでると、そこでお年寄りが集まってきて「俺たちもう用なしなのは分かってるけど、死にたくても死ねないんだよね。ハハハ」とか口々に仰います。そこまで言うならいますぐそこの窓から飛び降りればお寺も近いし簡単に成仏できるんじゃないかと言いたくなる気持ちをグッとこらえて「そんなこと無理でしょう。待っているご家族もいらっしゃるんじゃないですか」と返すことも多いんですが、ハッとするのはいまの団塊の世代の高齢化の現状と、70代中盤から80代90代の軌跡というのは根本的に異なるんじゃないかと思い当たるからです。

 家族の話をすると寂しそうな表情をされる高齢者が多いのは、とても印象的です。

 闘病の末に伴侶を失った、子供がいなかった、あるいは結婚して独立した、一緒に住んではいるけど日中は働きに出ていて独りぼっちだなどなど、人ひとりごとのドラマは万別です。だからこそ、私なんかは高齢者に「日本に、この社会に生まれてきてよかった」と思って最期を迎えてほしいと願うのです。私に「死ね」とか言われているうちが華ですよ。

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