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鳥集 徹
2017/02/01

風邪予防の新常識。うがい薬に気をつけて!

受験生の親御さん、これは必読です

 はじめまして。「週刊文春」や「文藝春秋」に医療関係の記事を書いている鳥集(とりだまり)と申します。あまり知られていない医療の新常識や取材のこぼれ話を、どんどん書いていきますので、どうぞよろしくお願い致します。

 さて、この冬はインフルエンザやノロウイルスが猛威をふるっています。ドラッグストアにはズラリとうがい薬が並んでおり、毎日欠かさず、洗面台でガラガラっとしている人も多いのではないでしょうか。中でも根強い人気があるのが、茶色くて独特の匂いでおなじみのヨード系のうがい薬です。

 でも、ヨード系のうがい薬は、風邪予防には効果的ではないってご存知でしたか?
京都大学環境安全保健機構健康科学センターが2005年に、うがいの効果を調べるため、387人の健康な人たちを「水でうがいする群」「ヨード系の薬でうがいする群」「ふだん通りにする群」に無作為に分けて、60日にわたって風邪の感染率を調べた臨床試験の結果を報告しています。論文によると、水またはヨードの群の人たちには、少なくとも1日3回うがいをするようお願いしたそうです(Satomura K. Am J Prev Med. 2005;29:302-7)。

強力な殺菌効果で常在菌まで殺してしまう

 その結果、なんと「水でうがいをする群」がもっとも風邪の感染率が低く、「ヨード系の薬でうがいをする群」は、「ふだん通りにする群」と感染率にほとんど差が出ませんでした。つまり、風邪予防には、水うがいで十分ということです。

 ヨードといえば、手術前の皮膚消毒に使われるくらい、殺菌効果の高い薬です。それなのに、なぜ風邪予防にはなりにくいのでしょうか。それは、常日頃から口やのどの粘膜の中に棲んでいる「常在菌」まで殺してしまうからだと考えられています。
腸や皮膚などに棲む菌もそうですが、ふだん健康な人にとって常在菌は、抵抗力を高める働きをしていると考えられています。いわば「常在菌のバリア」が、病原菌の繁殖やウイルスの侵入をある程度防いでくれているわけです。そのバリアが、ヨードを使うと崩れてしまうのです。

 また、ヨードは気道の粘膜を傷つける可能性も指摘されています。これらのマイナスの作用によって、プラスの作用が打ち消されてしまうわけですね。まさに、強い殺菌効果がかえって仇になっていると言えるでしょう。

抑うつ、脱毛……ヨードの過剰摂取は危険がいっぱい

 もう一つ、ヨード系のうがい薬には、注意したほうがいいことがあります。ヨードをたくさん飲み込んでしまうと、「甲状腺機能低下症」を起こす危険性があります。ヨードは甲状腺ホルモンの原料になるのですが、過剰摂取すると甲状腺の働きが低下してしまうのです。

 この病気になると、疲労感、眠気、記憶障害、抑うつ、無気力、脱毛、皮膚の乾燥、むくみ、便秘、寒がり、体重増加など、様々な症状が現れます。ですから、間違ってもヨード系の薬でうがいをした後に、「ごっくん」と飲むようなことはしないでください。

 それでも「うがい薬を使いたい」という人に、医師がすすめているのが「アズレン系」のうがい薬です。薄めると紫色になる液体で、商品名の後に「AZ(〇〇うがい液AZなど)」と入っているものです。「アズレンスルホン酸ナトリウム」が主成分で、抗炎症作用がありますので、のどが痛くなってきたらアズレン系と覚えておくといいかもしれません。 

日本の水道水は優秀だ!

 ちなみに、福岡市の保育園に通う2~6歳の子ども約2万人を調査した研究では、意外なことにお茶のうがい効果が高かったという結果が出ています。「水では、なんとなく物足りない」という人は、お茶うがいを試してみるのもいいかもしれません。
また、京都大学の研究では、「水道水に残留する塩素が予防効果を発揮したのでは」とも考えられているそうです。ですから、塩素を除去する機能のある浄水器を通すと効果が落ちるかもしれません。

 とはいえ、日本のように安心して水道水を飲める国は、そうありません。風邪予防には、せっけんと流水による手洗いも効果的とされています。水道水で風邪予防できるのですから、ありがたい話です。

「帰ったら手洗いとうがい」。当たり前のことのようですが、基本的なことをきちんとするのが、健康維持には第一です。

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