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梅津 有希子
2015/11/23

総勢49匹の名物看板猫がズラリ登場。昭和レトロな個人商店で働く猫たち

『吾輩は看板猫である』 (梅津有希子 著)

 1作目の『吾輩は看板猫である』を刊行したのが2011年のこと。東日本大震災の前日に書店に並んだ。初めて出す本が大好きな猫の本で、東京中を歩き回って何匹もの看板猫を探した。店主の方々から、たくさんの猫愛あふれるエピソードを聞きながら、気ままでマイペースな猫たちを粘り強く待ちつつ撮影。犬と違って「マテ」や「オスワリ」が出来ない猫の撮影はとにかく大変で、ふらりと出て行ったきり、待てど暮らせど帰って来ない猫様も多数。後日、改めて撮影に伺った店もあった。

吾輩は看板猫である (文春文庫)

梅津 有希子(著)

文藝春秋
2015年11月10日 発売

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 2作目は、東京スカイツリーの開業に沸く2012年に刊行。634メートルもの大きなタワーが完成し、たくさんの観光客が押し寄せ、にぎやかに変わりゆく下町。その一方で、昔ながらの懐かしい風景もまだ残っており、のんびりと店番をする猫と、変わらない東京の一面を描きたいと思って作ったのが『吾輩は看板猫である 東京下町篇』だ。

吾輩は看板猫である 東京下町篇

梅津 有希子(著)

文藝春秋
2012年4月25日 発売

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 店主が高齢で、「跡継ぎもいないので自分の代で閉める」という店も多かった。地方出身者のわたしは、「東京の下町」と聞くだけでうきうきするし、煎餅屋や唐辛子店、相撲小物店など、地元北海道では見かけることのない専門店に心が躍った。しかもそこに、かわいい看板猫がいる。「なんと幸せな光景なんだろう」と、取材をするたびに心がホッとなごみ、幸せのおすそ分けをいただいたような気持ちになっていたものだ。

 

 文庫化にあたり、取材したすべての猫たちの近況を確認した。1作目の刊行から4年経ち、天国へと旅立った猫も少なくない。成猫は、人間の4倍の速さで年をとる。4年前に取材した猫は、人間でいうと16年の年をとった計算になる。ペットと暮らしている人ならわかると思うけれど、犬も猫も、1年の間に何が起こるかわからない。いつ病気になるかもわからないし、突然寿命を迎えるかもわからない。

 

 そう思うと、変わらず元気に店番をしている猫たちの近況が聞けるとほんとうにうれしいし、亡くなった猫たちには、「ありがとう。やすらかに」という感謝の気持ちしかない。

 

 かわいいみんなに出逢えてよかった。多謝!

 

(「あとがき」より)

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