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「ワイドショーの主役」小泉進次郎の遊説を支える鉄壁の自民党軍団

「ごく普通の38歳」を等身大以上に見せる舞台装置が存在する――ルポ参院選2019 #6

2019/07/20
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当選1回の頃から精鋭職員を割り当てた

 東京・永田町にある自民党本部では昔から、大型国政選挙に突入する直前に通常の部署の壁が取っ払われる(参照:「来るなと言われても田中角栄は行く!」 “選挙の神様”が挑んだ史上最大の作戦)。今回は、「選挙対策グループ」「組織・政策グループ」「広報班」「参議院選対班」「総務・経理グループ」の5グループに再編され、全職員が振り分けられた。

 

 なかでも「組織・政策グループ」に一番多くの人員が割かれている。総裁の安倍晋三を始めとする党執行部の遊説日程や企業や団体への働きかけを担当する、6班・130人体制の実働部隊だ。その傘下にある「党役員・閣僚遊説班」に、小泉のための遊説チームが立ち上がったのは、6月のことだった。

 総裁や幹事長のために特命班がつくられるのは慣例だが、自民党は小泉を特別扱いしてきた。当選1回の頃から精鋭職員を割り当て、3人がかりで彼の全国遊説を演出してきたのだ。過去6回は男性だらけのチーム編成だったが、今回から若い女性職員が加わった。

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 自民党関係者は言う。

「中央よりも地方の声が比較的強い自民党では、大物弁士が各選挙区に送り込まれる際でも、9割5分が地方組織の意向に従って会場や日時が決められています」

寸分の狂いもない移動時間を独自に割り出す

 

 残りの「5分」が、総裁、幹事長、官房長官、そして小泉が来援するケースだ。しかも、小泉の場合は演説に立つ地点まで自身でこだわり、党本部がトップダウンで指定するケースが多かった。

 演説会そのものは多くても1日5か所に過ぎないが、小泉が投入されるのは自民党が苦戦を強いられている選挙区。1か所目は高齢者が多い集落で10時半、2か所目は地方都市の中心部で12時半、3か所目は夕方のショッピングモール前――などと、それぞれの演説会が「最も人が集まりやすい時間」に設定されている。小泉は選挙戦が始まれば2週間以上も、乗り物に座って、降りて、喋って、握手して、また車に乗って……を60~90分ごとに繰り返す毎日を送る。2日に1回は、地方の宿で朝を迎えている。

 

 一方、「チーム小泉」の面々は党本部7階の一室にこもり、JTBの時刻表や路線サイト、党の地方組織や現地のタクシー会社に直接問い合わせた情報を掛け合わせ、寸分の狂いもない移動時間を独自に割り出す。こうして組み立てられた日程表に基づき、各県警の警備態勢も敷かれ、党本部からはマイクとスピーカーの性能が抜群に良い高機能広報車「あさかぜ」が派遣される。

 さらに、現場にはメンバー3人のうちの1人が毎日派遣され、小泉のかばん持ちをしながら、ツアーコンダクターのような役割をこなす。小泉が分刻みで動き、効果的な応援演説をこなすべく、不可能な移動を可能にする「魔法のじゅうたん」を手作業で敷いているのだ。

 こうして「ワイドショーの主役」はつくられてきた。

写真=常井健一

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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