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西澤 千央
2017/02/21

NHKのスーパーエリート、有働由美子がお茶の間の主婦に嫌われないワケ

気取らないイイ女。女子アナは有働一強時代です

 朝。今日という一日のはじまり。朝くらいは悪意や憎悪や嫌悪から解放され、さわやかな時間を過ごしたい、いい人でいたい。しかしそんなささやかな願いすらなかなか叶えてはもらえない・・・・・・。

 それはこの番組があるから。『あさイチ』。あのわざとらしいまでの"朝ドラ受け"に心を逆撫でされ、狙いすぎ感ありありのタブー企画に胃もたれを起こし、罵詈雑言ファックスを敢えて読み上げるストロングスタイルに心がかき乱される・・・・・・。イライラするけどつい見ちゃう。ちゃちゃいれたくてつい見ちゃう。

 気づけばツイッターを起動し「出た、宮崎美子と内藤剛志のぶりっ子中年ゲストコンビ」「スゴ技Qの宮下君はアレか、ポロシャツの下の乳首をちょっと透かせるところまで契約条項に盛り込まれているのか」などの妄言を脊髄反射でツイートする始末です。私のような中毒者が多いのでしょうか。『あさイチ』、視聴率的にも朝の情報番組では向かうところ敵なしの強さを見せつけているようです。

型破りの『あさイチ』を体現する有働さん

 今やジャニーズの好感度を一身に背負わされた感のあるイノッチ、生けるクソリプおじさん(※筆者命名)としてちょいちょい発言が炎上する柳澤解説員。そしてこの型破りな番組を体現する女、有働由美子アナ。好きな女子アナでは常に上位にランクイン、最近では「理想の上司」ランキングの常連でもある有働アナ。なぜ有働アナはここまで高い好感度を誇るに至ったのか。今回はその点について考えてみたいと思います。題して「由美子に何が起こったか~8時15分のやりすぎシンデレラ~」。

紅白司会の常連でもある。第65回NHK紅白歌合戦にて ©時事通信社

女子アナは有働一強時代です

 海外勤務を経験し、朝のニュース番組、夜のスポーツ番組、さらには紅白の総合司会まで……。これはNHKにおいて出世コースまっしぐらと言えるでしょう。「いかなる不眠症患者も眠りにつかせる驚異の朗読力」こと加賀美幸子、「絶対に笑ってはいけない深夜便」こと森田美由紀、「しゃべるだけでそこはNスペ」こと山根基世ら怪物アナの跡を継ぐ女であることは間違いありません。膳場の貴子もセレブ青山もクボジュンもミキティ住吉もいない、まさに有働一強時代。

 そんなスーパーエリートたる有働アナが朝の番組で主婦とタイマンかますというのだから穏やかじゃありませんよ。そこで有働アナが徹底的に取ったポーズが「寂しい独身女」キャラ。初の自叙伝『ウドウロク』(新潮社)にも自分がいかに雑で物悲しい日常を送っているかにかなりの分量を割いています。以下、親しみと敬愛を込めて”由美子”と呼ばせてください。

「寂しい独身女」というセルフイメージ

 夕方のスーパーにて、家族のためにご飯を作るのであろうお母さんたちに紛れてレジに並ぶ由美子。「こんなに混んでいるのに、一人分でごめんなさい」「かごの中身が人生の薄さのように見え、言いようのない虚しさにさえかられる」考えすぎだ由美子。そんな矢先、後ろに並んだ小学生が無邪気にこう言ったそう。「おかあさん、この人のかごはさびしいね」。それを聞いたお母さんが一言「そんなかわいそうな人のかごの中とか、見てはだめ」。

 このくだりを読み、そこそこの数の人間が「……由美子、話盛ったね」と思ったことでしょう。そもそも夕方のクソ忙しい時間帯、列で歓迎されるのはスカスカのカゴの方と相場は決まっておりまっせ!!

 華やかな仕事してますけど、家に帰れば悲しい一人もんですよ……。こちら「どぶろく特集」のときの由美子。「私以前どぶろくにハマってたんですよ。でも女でどぶろく飲むなんて怖いって言われて」とどこに向けてか分からないアピール及び言い訳をかます由美子。おそらく由美子の中で「寂しい独身女」+「男社会に馴染む勝気な女」=「ひとりどぶろくを飲む女」というセルフイメージがあるのでしょう。昭和か。ひばりか。一人酒場で飲む酒は~か。

スタッフには「クロウドウ」と呼ばれることも ©文藝春秋

有働さんの親近感のひみつ

 そんな、気どらないイイ女イメージが若干90年代手前で止まっている感もある由美子ですが、由美子の親近感大作戦の神髄がダダ漏れとなるのは、やはり金曜日の「プレミアムトーク」でしょう。

 先日『べっぴんさん』の栄輔役でおなじみの松下優也がゲストで来たときのこと。まず、ゲストが若手俳優のときに現れるのが「仕事を忘れイケメンにはしゃぎすぎる由美子」。オープニングの立ちトークから既に始まっている、由美子の親近感劇場。分かりやすくニマニマしながら、ゲストにちょっと近づいたり、いやいやと離れたり、オートマチックにテンション爆上げ。

 トークが盛り上がってくると今度は「相手が関西出身だと仕事を忘れてついつい関西弁が出ちゃう由美子」がやってきます。これ、いわゆる「由美子のビジネス関西弁」というやつ。そしてこの一連の由美子劇場、ゲストの体調や心境をなぜか母親目線で心配し始める「おかん由美子」がラストに登場しておひらき。親近感というより膨満感……。

 有働由美子。全てにおいてやりすぎてしまう女。以前番組でタモリが「ゲストを大事にしながらどこかでバカにしてる」と有働アナを評しておりましたが、さもありなん。優秀だからこそ相手が自分に求めているであろう姿を察知し、その5割増しの味付けで返してしまう。それが人によっては「バカにしてる」ようにも映ってしまうというのは分かる気がします。確かに有働アナの「イケメンにはしゃぐ女」の小芝居とか、やりすぎた子役に近いものがありますからね。

ガチガチの男社会で生き抜いてきた

 一方で有働アナは「自分はNHKのエリートアナ」という自負が少々強すぎるのかなとも思うのです。その自負が一般の主婦目線に“降りなきゃっ”という謎の強い思い込みを生み、やりすぎ演出につながる。バンジージャンプってありますよね。『あさイチ』で、有働アナはエリートアナという崖の上から決死のダイブを試みたわけですよ。しかし背中についた“プライド”という名のロープが由美子を時折崖に引き戻そうとするのです。

「私は!ダメで!雑な!独身女!!」ビヨヨ~~ン

「いえいえ!私は!NHKの!トップアナ!!」ビヨヨ~~ン

 この行ったり来たりのビヨヨ~ンに「ここまでしないとガチガチの男社会では生き残れない」という悲しい現実も見るわけですが、最終的には「由美子やっぱり考えすぎだ」というところに着地する。有働アナ、ツイッターやったらプロフィールに「ときどき毒吐きます」って書くタイプだろうなと思いました。

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