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山本 一郎
2017/03/02

「飲食店はすべて禁煙」ファッショ的だけど時代だね感

愛煙家と嫌煙家と社会問題もどき

 むかし小谷野敦さんという愛煙家の作家が『禁煙ファシズムと戦う』という本を出していました。長年のヘビースモーカーであった私は当時タバコをやめて数年経過したところであったため「吸う立場も分かる、禁煙したい側も分かる」という立場で複雑な気持ちで読んだのを思い出します。何だろう、この太平洋戦争直前の日系アメリカ移民の気分。

 そんなわけで、厚生労働省が先日、小規模店舗でも禁煙を盛り込んだ、すべての居酒屋などでは死刑宣告のような通達を出していました。いやー、過激でいいですね。これは冬でも青空ビヤガーデン待ったなしの展開なのでしょうか。家族連れで個室居酒屋を利用することもある拙宅山本家としては、同情しつつも本当に実現すればお店選びの選択肢が増えそうな話です。普通に三兄弟を夫婦で連れて銀座ライオンとか行って唐揚げとかローストビーフとかミックスピザとか食べてますからね。酒のつまみ的ですけど、子供たちが好きなんですよ。で、葉巻好きの麻生太郎大臣ならばシガーバーは許容するはずだとかいろんな風説も乱れ飛びましたが、概ね「お前らみんな禁煙しろ」という状況になったのは時代の流れなのでしょうか。

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他の国でも禁煙してんだからうちも禁煙にしようぜ的な

 昨年10月すでに塩崎恭久厚労大臣が会見で「罰則を伴う受動喫煙防止対策をオリンピック開催国はみんなやっているわけです」とかいって厚労省案を出しております。もう少し言い方あるだろ。なんというか、他の国でも禁煙してんだからうちも禁煙にしようぜ的な主体性の無さげなお話をしている始末でして、愛煙家はご愁傷様なのであります。なんか普通に暮らしていたら容赦なく外堀どころか内堀まで埋められていく大阪城籠城組が愛煙家の立場です。お前ら半年後にはみんな死ぬんだよ。私もあまり人前で大声では言えない歳から結婚前まで日に二箱はピース・ライト(当時)を咥えていた身として、もしも喫煙全盛期に塩崎大臣がそんなこと言ったら黄色いペンキでも持って厚労省の前に向かったことでしょう。

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 いみじくも塩崎大臣が会見でも述べ、また厚労省関係者も「これは仕方がない」と説明するのは基本的にはWHOとIOC(国際オリンピック委員会)とで、鉄壁の「受動喫煙による健康被害のないオリンピックにしようね」っていう決め事を五輪開催都市は少なくとも遵守しなければならないというネタがあるからです。なんか頭の上に漬物石でも置かれた気分ですね。WHOや日本医師会はまあ分からんでもないけど、IOCとかあんだけ金に汚くて人様の肺の白黒を言えた義理かという気持ちもしないわけではありませんが、そういう問題は深く胸にしまっておくことにしましょう。

 これはもう愛煙家が所沢あたりで一堂に会してスモリンピックでも開催すればいいんじゃないぐらいに思うわけですけど、実際には飲食店組合の一部が「売り上げが減って困る」みたいなしょうもないネタで抗議したぐらいで、あんまり禁煙反対方面には盛り上がりが欠けているようです。やる気ねえのかよ。と思ったら、詳しく調べていくとどうも「禁煙を飲食店が守ると売り上げはむしろ増える」データがぞろぞろとロンドンやソチから出てきてしまってるようです。何ということでしょう。タバコを吸う権利を認めろ的な反ファシズム論で盛り返すはずが、むしろ愛煙家に人権無しぐらいの勢いで旗色が悪くなってしまっています。

 なんせ、喫煙大国であった中国ですらも、北京五輪では例外なく禁煙が決まり、また最近では公共の場所での禁煙が義務付けられるなどそこそこ面倒なことになってます。五輪でもなければ誰も守らないだろと言われてますけど。良く分かりませんが、まあ、完全室内禁煙をやるならまずお前らの深刻過ぎる大気汚染を何とかしろという気もしますが、そういう問題は深く胸にしまっておくことにしましょう。

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