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明石家さんまが「慌てた人生。生き急ぎ人生」と語る理由

(「さんまのまんま」14年12月14日放送より)

 文春オンラインでもおなじみ、テレビっ子ライター・てれびのスキマさんがこのたび『人生でムダなことばかり、みんなテレビに教わった』(文春文庫)を刊行しました。

 有吉弘行、岡村隆史、香取慎吾、黒柳徹子、清水富美加、タモリ、友近、ふなっしー、宮沢りえ、百田夏菜子、レイザーラモンRG……、100人の有名人がテレビで発した「何気ない一言」。放送が終われば消えて行く言葉のなかに見える人物像、人生哲学とは一体どんなものでしょうか? 発売を記念して、今回は特別に、文庫収録された5つのコラムを全文公開します!

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「サラリーマンの人の150歳分」喋っていると笑う明石家さんま。自らの生き方を「生き急ぎ人生」と形容している。

「生きてるだけで丸もうけ」というのはあまりにも有名なさんまの座右の銘だ。どんな逆境に立たされても生きていればそれだけでいい、「つらい時でも笑ってられる」そんな心持ちを謳った言葉だろう。彼の盟友である村上ショージ、Mr.オクレらは収入がなく食べられなかった時期に「焼肉パーティ」と称し、ご飯だけを炊いて、フライパンの上に「ロース」とか「カルビ」などと書いた段ボールの切れ端を乗せ、楽しそうにそれを取り合ってご飯を食べていたという。さんまはこの話をよく嬉しそうに披露する。そして「ああ、人生こっちだ」と思うときがあると常々絶賛している。

「僕はその時々でハングリーさが出る位置に気持ちを置こうとしてますから、その究極が『生きてるだけで丸もうけ』という言葉に繋がると思う」(※1)

 だからなのだろう。どの番組を見てもさんまは全身を使って汗だくになりながらしゃべり続け、身体を躍動させ「クァーッ」と声をからして笑っている。彼が手を抜いている姿を目にした記憶がない。「笑いは戦場や」という自身の言葉どおり、共演者と、スタッフと、そして視聴者と常に戦っている。そして失敗を恐れていないように見える。失敗さえ、いや失敗こそ、笑いに変えられるという確信があるからではないだろうか。その結果、月に2度ハニートラップに引っかかるという笑うしかない事態を起こしてしまったりするのだが――。

©文藝春秋

 失敗を振り返り、自分のダメな部分を悔い改めようと思うことは何度もあったという。けれど「追いつかなかった」と述懐する。

「どうやっても悔いは残るでしょうから。『悔いのない人生を』なんて言う人はね、なにか違うんじゃないかなぁと思うんですよね」(※2)

 どんな生き方をしても悔いは残ってしまうものだ。それをいちいち振り返って思い悩んでも仕方がない。

「人生やっぱりやり残すことが嫌やんか、ひとつでも」(※3)

 その結果失敗してもいい。さんまからしてみれば「失敗」なんて格好の笑いのネタ振りでしかない。悩んでいる暇があるのなら、ひとつでもやり残すことがないよう、未体験の場所に「慌てて」「生き急ぐ」ように飛び込んでいく。それがさんまの哲学であり人生だ。

(※1)「本人」Vol.11
(※2)WEB「ほぼ日刊イトイ新聞」08年2月7日
(※3)フジテレビ「さんまのまんま」14年11月30日

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