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さかなクン「(母親が)自由に泳がせてくれた結果、ホントに魚になっちゃったぁ!」

(「はに丸ジャーナル」15年5月6日)

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「結婚しているの?」と問われると「まだなんです、ギョめんなさい」となぜか謝るさかなクンは、どういうタイプが好きなのかと訊かれると目の前の水槽の中の魚に話しかけるように照れくさそうにして話を逸らした。さらに追及されると「お魚に一途で……」(※1)と頬を赤らめた。

 幼稚園児の頃から絵を描くのが好きだった。けれど、当時描いていたのはトラックやゴミ収集車など。そんな時、小学校のクラスメイトが描いたタコの絵に衝撃を受けた。画面から今にも飛び出してきそうな姿に魅了されたのだ。「これは調べてみたい!」と図鑑を読みあさり、魚屋に入り浸った。さらに生きたタコを見るために海岸に通うと、タコ以外の魚にも虜になっていった。とにかく頭の中は魚のことでいっぱい。中学になると「水槽学」だと思い込んで「吹奏楽」部に入ってしまった(※2)ほどだ。

 学校の教師からはその絵の才能を伸ばすため「専門の先生に習わせた方がいい」と勧められた。しかし、母親はそうすると先生の画風になってしまうから、とそれを拒否した。だから、さかなクンは絵も魚への知識も自分流に追求することができた。母親が自由に泳がせてくれたから、「ホントに魚になっちゃったぁ!」のだ。

©共同通信社

 中学時代同級生だったドランクドラゴンの鈴木拓も「彼の持っているものは全部魚に関連しているもの」だったと証言している。さらに授業中、机の中に手を入れてフグの剥製をゴソゴソと撫でていたのを目撃したという(※3)。そんな言動だからクラスでは当然浮いてしまう。「タコ、タコ!」などとからかわれることもあった。だが、さかなクンは傷つくどころか「わっ、呼んでくれた! そうだよ、タコだよぉ!」と喜んだ。

「自分の場合強くなろうとか、強く生きようとかじゃなく、ただそこにお魚がいて、逢えた! って感動があまりにも大きいのであまり周りの声をダイレクトに捉えてなかった」(※4)

 彼と共演した能年玲奈(現・のん)は「さかなクンがいるだけでその場が幸せな空気になります。すごいなんか楽しくなります」(※5)と評している。魚に一途でいたからこそ、周りなど気にせずに楽しむことができた。だから逆に、周りにもその楽しさが伝播する。さかなクンはまさに魚のように自由に社会を泳ぎまわっている。

(※1)日本テレビ「おしゃれイズム」15年5月17日
(※2)NHK総合「土曜スタジオパーク」12年6月23日
(※3)「鈴木拓」オフィシャルブログ08年10月29日
(※4)NHK総合「はに丸ジャーナル」15年5月6日
(※5)フジテレビ「笑っていいとも!」13年10月7日