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山本 一郎
2017/05/04

「やったもん勝ち」ネット業界のイノベーションが世間を犯罪まみれにするまで

最先端技術を駆使した「泥棒市」に見るマネーゲームの異様

 先日、私もお世話になっているフジテレビ系「とくダネ!」でご一緒する菊川怜が、カカクコム社やクックパッド社の経営で名を馳せた御仁と結婚するという話になり、新しい形のトロフィーワイフを発展的に世にプレゼンできた感じで良かったのではないでしょうか。夫婦というものは山あり谷ありなので、いろんな事態が発生し、そしてまた文春のお世話になる危機感も抱きつつ良い結婚を、相応しい人生を送っていただきたいと心から祈っております。

なぜネット界隈の不祥事は一般的な話題になりにくいのか

 そのクックパッド社も経営陣のドタバタですったもんだしていました。レシピサイトとして乳児に危険とされるハチミツ入りレシピを離乳食として紹介したものを削除するのしないの、ほかの安全性の微妙なレシピをどうするのという議論が沸き上がっていたのは記憶に新しいところです。業者寄りの目線で言うならばクックパッドもある種のもらい事故であって、以前にネットの健康情報で問題のある記事を量産していたDeNA社のキュレーションサイト問題があってからみんな神経質になっている部分はあるんですよね。

一般的な話題になりにくいネット界隈の問題 ©iStock.com

 そして、問題はこの辺のICT(情報通信技術)系サービス企業に不祥事が続出しているという点にあります。じゃあいままで不祥事がなかったのかと言われるとそうでもないのですが、ネット界隈というのは経営者も利用者もネット専門媒体も距離が近いために、なかなか一般的な話題として騒がれるような事件にまで成長しないというのが辛いところなのです。そろそろソーシャルゲーム業界も新たな火が噴き上がりそうですし、持て囃されていたハードウェアベンチャー界隈もUPQ社という新興企業が無い機能を有ると宣伝し自社製品を売り捌いた挙句に後から「そんな機能はなかった」ことが発覚して騒ぎになっていました。

「一万円札5枚が、5万9500円で出品される」問題を再考する

 そんななか、NHKでもようやく報じられることになったのがメルカリやヤフオク!(旧・Yahoo! オークション)などの利用者同士の売買を仲介するネットサービスで起きていた「現金出品」のあれこれです。文春の読者の方であれば、インターネット上で「一万円札5枚が、5万9500円で出品される」のを見てすぐピンと来た方も多くいらっしゃるかと思うわけですが、これはもう90年代からあるクレジットカードの現金化商売がネットに乗り出してきたというネタなんですよね。つまり、とにかくいま現金が欲しい、借金さえできなくなった多重債務者がカード決済で現金を得る手段として、ネットオークションを利用しているのです。もちろん、今回の現金出品に関しては、メルカリなどは売買に仲介手数料を取るため、一時は利用規約を古い紙幣も出品可能なようにわざわざ変更していました。実際に、古い紙幣が売買されていたかなどメルカリ側は確かめようがないので、結果的には野放し黙認であり、このような適法性が疑わしい出品があったとしても収益に結びつくならいいかという気持ちがあったんじゃないのと邪推されても仕方がない展開になっておるわけであります。

©iStock.com

 さすがに批判が殺到したのでメルカリもそのような出品があれば削除する方向で管理するようにはなったのですが、今度は一万円札を折り曲げて福沢諭吉の顔で泳ぐ魚のオブジェとして出品されたり、果てはぱちんこやパチスロなどで換金用の具として使われる特殊景品が出回るといった事態にまで発展しました。みんなよく考えるなあと思うわけですけど、基本的には法的に認められる利息制限の枠内でキャッシングをしてきた業者は昔から壺や古い食器などの骨董品や絵画などの美術品といった「値段がはっきりしない品物」を使って、中古品を扱う故買商のスキームで資金調達をしたり、お金が足りない人に資金を融通したりしてきたわけです。モノの値打ちに敏感な仕事を長年してきた人たちからすれば、メルカリも含めたネット業界の浅い知見など赤子の手をひねるようなものでしょう。