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山田 隆道
2017/05/12

【阪神】マスコミは迷わずメッセンジャーを「エース」と書くべきだ

文春野球コラム ペナントレース2017

 普段、プロ野球の試合結果を伝えるテレビや新聞などを見ていると、「阪神の先発はエース・○○。その立ち上がりは□□」「阪神先発のエース・○○が粘り強い投球で□□」などといったフレーズに出くわすことがある。ひと昔前は、この○○に能見篤史が入ることがもっとも多く、さらに遡って2000年代初頭~中盤にかけては井川慶の独壇場だった。

 しかし、今季はこのエースという言葉自体が使われなくなった印象を受ける。実際、いくつかの新聞を調べたところ、「阪神先発の藤浪が因縁のヤクルト戦で7回1/3を投げて1失点」(5/4スポーツニッポン)、「阪神の先発は能見。中日の先発・ジョーダンとの左腕対決となった」(4/30デイリースポーツ)、「阪神先発のランディ・メッセンジャー投手(35)がハーラー単独トップとなる開幕4連勝」(4/28日刊スポーツ)など、投手名をそのまま伝える記事が目立っていた。

 もちろん一部には例外もあった。たとえばスポーツ報知(4/11)には「阪神・金本知憲監督(49)が10日、悩める若きエースの藤浪晋太郎投手(22)に『小細工禁止令」を発令した』という記述が見られ、東京スポーツ(5/4)も「エース・藤浪晋太郎投手(22)が7四球ながら8回途中1失点で3連勝を飾った」と書いていた。スポーツ報知と東京スポーツという決して阪神寄りではない両紙は、藤浪にエースの称号を授けているわけだ。

虎のエースにふさわしいメッセンジャーの実績

 これはつまり、現在の阪神には「彼こそがエースだ」と全マスコミが判子を押せる投手がいない、ということなのだろう。本来なら藤浪にそうなってほしいのだが、まだ物足りないと思われているからこそ、「エース・藤浪」と書くのは一部に留まっているわけだ。

 しかし、私はもういいんじゃないかと思っている。日本人の潜在的な気持ちは非常によくわかるのだが、これだけボーダーレスの時代なんだから、さすがにもう全マスコミが迷わず書いていいんじゃないか。阪神のエースはランディ・メッセンジャーだ、と。

3・4月度のセ・リーグ投手部門月間MVPに輝いたメッセンジャー ©文藝春秋

 ご存知、メッセンジャーは今季で阪神在籍8年目。外国人選手としては、球団史上最長となった。その間、投手成績は常に安定していて、過去7年間のうち二桁勝利5回。獲得タイトルも最多勝1回、最多奪三振2回。今季も3年連続で開幕投手(通算4回目)を務め、5月10日までで6試合に先発して4勝負けなし、防御率2.58。勝ち星と奪三振数はリーグトップを走っており、3・4月度のセ・リーグ投手部門月間MVPにも輝いた。

 正直、こんなに優秀な先発投手はそういないだろう。近年の成績だけを見たら、メッセンジャーが虎のエースにちがいない。その証拠に、5月5日の広島戦でメッセンジャーが先発し、打たれはしたものの、味方打線のおかげで阪神が勝利した試合のあと、金本知憲監督は「広島にウチのエース(メッセンジャー)が投げて4点取られたけど、底力を見せた。エースで勝てないのか、というところでよくはね返してくれたと思う」という談話を残した。すなわち、チームとしてはメッセンジャーがエースだと認識しているわけだ。

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