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柳瀬 徹
2017/06/13

ヤフーが役員フロアにもフリーアドレスを導入した事情

役員と社員の距離を近く。「爆速」経営を実現するオフィス

 昨秋、「東京ガーデンテラス紀尾井町」(東京都千代田区)の5~24階に新オフィスを構えたヤフー株式会社。フリーアドレス制の導入や、外部の人でも自由に入れるコワーキングスペース「LODGE」など、広がりつつある「新しい働き方を推進するオフィス」の象徴ともいえる存在として、注目を集めている。

プロジェクトデザイナーにディレクションを依頼

 週休3日制の導入検討など、働き方に関わる新機軸を次々と打ち出す同社COOの川邊健太郎氏から、この新オフィスの役員フロアのディレクションを依頼されたのが株式会社トーンアンドマター代表、広瀬郁氏だ。とはいえ広瀬氏は建築家でもなければ、デザイナーでもない。「プロジェクトデザイナー」というあまり聞き慣れない肩書を名乗る広瀬氏が目指した、組織の内と外での協働を促すオフィスのあり方とは――。

©Tone&Matter

――COOの川邊さんとはどういうご縁だったのですか?

広瀬 ずいぶん昔に、ある勉強会で知り合いました。僕が1973年生まれで川邊さんが74年、どちらも大学時代にインターネットが本格化した世代なんです。GYAOの社長になられるさらに以前ですね。

 ある時、川邊さんが館山にある老朽化した建物を私費で購入されて、そこに招待されたんです。とある企業の保養所だったそうですが、リノベーションして自宅として使いつつみんなで釣りにいったりご飯を作ったりしながら、ここで働けたらおもしろいじゃないかと言うんですね。

 川邊さんはその元保養所をのちに「館山ベース」と命名しました。東日本大震災の翌年にヤフーが石巻に作った「石巻ベース」の経験が紀尾井町の新オフィスに活かされているんですが、「どこでもオフィス」制度(月に5回〔2017年5月時点〕までオフィス以外で勤務することができる制度)などの働き方改革のタネは、そもそもは館山にあったのかも知れません。

 

広瀬 リノベーションするにはコストの課題もあるし、愛着も湧くので、みんなでDIYをやって館山ベースをリフォームすればいいんじゃないかと提案したら、「面白そうだから、それやりましょう。作業する人は集められます。」とすぐ乗ってくれて、そこから週末を中心に少しずつ、川邊さんの友達にも来てもらって手作りで現在の館山ベースを作っていったんです。社長さんや弁護士さんといった錚々たる面々が木を切ったり階段を作ったりするんですけど、みなさんに作業を教える必要があり、いつの間にかウチの事務所の若い子が棟梁みたいになってました(笑)。裏庭でひたすら竹を切っているのはヤフーの社員さんなのかなと思ったら、ピクシブの片桐孝憲社長だったり。ビジネスの世界で名前の通った人たちが工事作業員のようなことをやって作り上げました。

 館山ベースではヤフーの社員の方々も合宿会議などをしているようです。みなさんが会議している横で、川邊さんが料理を作ってみんなに食べさせたりして。川邊さんが議論のテーブルにつくとみんなが自由に発言しにくいと言うんですね。「俺が横でメシを作ってるくらいがちょうどいいんだ」と。このラフな男料理にも意味があったのかと(笑)。おもしろい人だなあ、と思いました。川邊さんとはそんなおつきあいをしているんです。

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