昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

MEGASTOPPER DOMI
2017/07/08

【オリックス】カリビアンの進化に貢献するロベルト・バルボン氏

文春野球コラム ペナントレース2017

ベースボールプレイヤー・オブ・カリビアン

 今や現代音楽に欠かせない「カリブ系音楽」。スカやカリプソ、レゲエに留まらず、ソカやレゲトンに至ってはクラブシーンにも絶大な影響を与えている。その「カリブ系音楽」、音楽家の間では諸説あるもののサルサやマンボといったキューバ音楽がそのルーツと言い切っても良いだろう。それだけかつてニューヨークで巻き起こったサルサブームは世界の音楽シーンを動かすきっかけであったという事か。映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」はそのキューバ音楽をふんだんに盛り込み、キューバの「国となり」を実に良く伝えた作品だと思うので機会があれば是非一見をお勧めする。また、野球ファンなら誰もがキューバを想像するに「野球大国」の印象も強いのではないだろうか。ソフトバンクのアルフレド・デスパイネ選手がそうであるように、今や多くのキューバ出身の選手がNPBでも著しい活躍を見せているのはご存知だろう。デスパイネに関しては活躍を見せ過ぎではあるが……。

 そのキューバ出身のNPB第一号選手が何を隠そう「オリックス・バファローズ野球教室名誉顧問」ロベルト・バルボン氏である。かつて阪急、近鉄でプレーした、いわゆる「レジェンド」でセカンドの名手。外国人選手ながら3度盗塁王を獲得するなど野球人としての輝かしい功績を誇り、またその明るく愛らしいキャラクターは多くの日本の野球ファンに愛された。ニックネームは「チコさん」である。

キューバ出身のNPB第一号選手であるロベルト・バルボン氏 ©文藝春秋

海を渡ったカリビアン、ロベルト・バルボン

 先日Bsステージ(京セラドームや、ほっともっとフィールド神戸で開催される場外ステージ)でご一緒する機会があったが、今尚、まさにスーパースターの輝きを放っていた。サービス精神旺盛なバルボンさんの爆笑トークは、ステージに集まったBsファン達をみるみる爆笑の渦に巻き込んで行く。「キューバからアメリカに渡った時のプロペラ機の話」「雪の積もる西宮に到着し、初めて見た雪に間違えてロシアに来たかと焦った話」。バルボンさんのすべらない話がてんこ盛りの爆笑ステージであった。

Bsステージの様子 ©MEGASTOPPER DOMI

 他にも数々の逸話を挙げれば本当にキリが無いバルボンさん。かの力道山に対して(当時のチームメイトに嘘の日本語を教えられたまま)、「リキ! 素晴らしい八百長だったよ!」と言い放った話は余りに有名である。また、 最近では名前から勝手にステフェン・ロメロをスペイン語圏の出身であると勘違いし、早く日本に馴染んで貰おうと「スペイン語で優しく話しかけた」所、アリゾナ出身のロメロには意味が通じずキョトンと苦笑いされてしまったと言うから思わず笑ってしまった。

 しかし流石は「レジェンド」バルボンさん。野球の質問をすると、その理にかなった野球理論に惚れ惚れするのもまた事実。やはり偉大な野球人なのである。

 前回のBsステージ、出待ちのタイミングでもカリブ勢の野球観と日本の野球観の違いを流暢な大阪弁で丁寧に説明してくれた。印象的だったのはカリブ勢が打席に立つ際の心理の話で、打順を問わずほとんどの打者が2ストライクと追い込まれるまでは長打を狙いに行くそうである。追い込まれてから単打狙いに切り替え、繋ぎの打撃に移行すると言うのだ。

 また、内野の守備に於いても日本の野手がバックハンドやダイビングキャッチを駆使し捕球に行くのに対し、カリブ勢の内野手は送球を主とし捕球に行く為、両手で捕球するケースが多いという。それには捕球の体勢が大きく影響するので、必然的にステップワークが磨かれて行くのだとか。 少年野球の頃からそうしたセオリーを叩き込まれた彼らが一人前の野球選手になる頃、プレースタイルという個性の違いが顕著に現れていると熱く語ってくれた。そんなバルボンさんに現役のNPBプレーヤーで一番の守備の名手は誰かと尋ねた所、即答で「駿太」と返ってきた。バルボンさん、あなたは本当に偉大な野球人です。