楽天が運営するネットショッピング・サイト「楽天市場」に出店する主力店舗が「楽天市場出店者友の会」を立ち上げ、「我々は送料無料化に賛成する」と声を上げた。
楽天は3月18日から3980円以上の商品の価格表示を「送料込み」にする方針を打ち出したが、任意団体の「楽天ユニオン」が「送料無料は弱小店舗に負担を強いる」と訴えた。調査に乗り出した公正取引委員会は「優越的地位の乱用になる恐れがある」として、東京地方裁判所に「緊急停止命令」を出すよう申し立てている。
「また楽天の横暴」「弱い者いじめ」と散々に叩かれた
送料無料化は店舗にとって負担になるはずだが、なぜ主力店舗は「賛成」に回ったのか。実は「友の会」の発起人になった12人の店舗経営者は2月28日、楽天会長兼社長の三木谷浩史とテレビ会議で会談していた。会談は90分を超え、三木谷は「今が正念場なんだ」と送料無料化の必要性を懸命に説いた。
楽天が「送料無料化」の方針を打ち出したのは2019年1月。店舗を集めた新春カンファレンスで方針を伝えた。日本でも猛威を振るうアマゾン・ドット・コムに対抗するには「これしかない」と打ち出した施策だったが、ネット上では「また楽天の横暴」「弱い者いじめ」と散々に叩かれた。
「店舗の声が聞きたい」
今年1月、三木谷は楽天市場の主力60店舗の経営者と直接会い、送料無料化に対する考えを聞こうとした。だが2月に入るとコロナウィルス問題が深刻化し、面談は前日にいったんキャンセルになる。
「テレビ会議でもいいから三木谷さんと話がしたい」
しかし、公取の調査などが始まり、世間の「楽天バッシング」は燃え盛る一方だ。三木谷と会うはずだった店舗の経営者たちは危機感を強め「テレビ会議でもいいから三木谷さんと話がしたい」と申し入れた。こうしてもともと面談の予定が入っていた2月28日にテレビ会議が開かれることになった。
テレビ会議は午後4時からに決まった。すでに遠方の店舗の経営者は面談に備えて上京していた。彼らは二子玉川にある楽天本社のテレビ会議ブースで、当日、上京する予定だった大阪や神戸の経営者はそれぞれの地域にある楽天支社から加わった。
会議が始まる1時間前、ネットにニュース速報が流れた。
〈公取が東京地裁に「緊急停止命令」を求める〉