昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

“軍事行動”か“降伏”か 北朝鮮にどう対抗すべきか

ルトワック博士の最新分析

genre : ニュース, 国際

 15日早朝、Jアラートが再び鳴り響く。国連による制裁決議が採択された直後にもかかわらず、北朝鮮はミサイルを発射した。大胆かつ不可解な北の行動をどのように読み解くべきか。軍事戦略研究、安全保障論の専門家であり、ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを歴任したエドワード・ルトワック氏による最新の情勢分析。

◆◆◆

北朝鮮への脅し

 トランプ大統領が習近平国家主席と4月に首脳会談を行ったことは皆さんの記憶にも新しいはずだ。私も当時の様子を間近で見ていたが、ワシントン(と東京)の政界では、「北朝鮮はすぐに核実験をするはずだ」と考えられていた。

 この会談の席で、トランプは習近平に対して「もし北朝鮮が核実験をして、それでも中国が普段通りにビジネスを行うのであれば、アメリカは中国からの輸入に規制をかける」と述べていた。

 このトランプの要求を受け入れた習近平は、すぐに北朝鮮に連絡をとって核実験の停止を求めており、それに従わなかった場合には中国からの北朝鮮への輸出を制限すると脅している。

 このメッセージは聞き入れられて、北朝鮮は核実験を止め、平壌の中で噂が広がって人々はガソリンスタンドに群がった。

 しかも中国政府は、北朝鮮からの輸入も止めている(ただし海産物の輸入は続いていた。中国国内の北朝鮮政府経営のレストランは相変わらず営業していたからだ)。

 ただしこれがミサイル発射実験への対抗措置であったのかは不明だ。

 私は6月に中朝国境の町である丹東を訪れたが、たしかに貿易は目に見えて減っていた。現地の人間とも話を交わしたが、彼らも「商売あがったりだ」と苦々しそうに話していた。

 ところが北朝鮮の核実験が停止、つまり北からの声明はなかったが、目に見える行動がなくなった次に起こったのは、米・中・日が逆に弾道ミサイルの実験の方に関心を寄せはじめた、ということだ。

 しかもここでは、ミサイル発射実験と核実験の重要度のバランスは、何も変わっていない。

弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長。北朝鮮の労働新聞が8月30日に掲載(コリアメディア提供・共同)©共同通信社

米国の外交的「大勝利」

 7月28日の北朝鮮のミサイル発射実験に対して、国連安全保障理事会は全会一致で決議案2371号を可決したが、これははじめて核実験を行った2006年から6度目の制裁決議であり、その中でも最も厳しいものであった。

 それは北朝鮮から石炭、鉄鉱石、銅、そして海産物という、彼らが物的に輸出できる商品のすべて(衣類を除く)を禁止するものであり、労働者のさらなる受け入れも禁止(といっても現在の雇用は今後も継続)するものであった。

 しかもこの時の安全保障理事会のメンバーは、5カ国の常任理事国だけでなく、「過激」なボリビア、北と伝統的に友好国であるエジプト、そして長期的に外交関係を持っているスウェーデンなどが含まれていたのだ。

 そういう意味で、この国連の安保理決議はアメリカにとって外交的な大勝利であり(といってもトランプ自身に手柄があるとは認められていないが)、アメリカが長年中国から得ようとしていた「大きな譲歩」であった。

11日、ニューヨークで開かれた国連安全保障理事会で、北朝鮮制裁決議案を採択。©getty
はてなブックマークに追加