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牧野 知弘
2017/10/03

マンションや土地が値上がりするかどうかを見分ける「たった2つの法則」

不動産のプロが教える金言「不動産は打ち出の小槌」その真意とは?

「値上がりするマンション、値下がりするマンション」「地価が上がる町、下がる町」──週刊誌などでは住宅価格の上下動を特集する号の売れ行きが大変よいのだそうだ。

 私のところにもよく同様のテーマについて取材がくる。自分が所有している家やマンションの価格の上下動を気にしたり、家の選択にあたってその家や地域の今後の価格の上昇を期待するのは、相変わらず日本人の多くが「家は所有していれば値上がりする」つまり「家は財産である」というステレオタイプな概念から一歩も抜け出してはいないことの証左だ。

地価の上昇で税負担が重くなることも

 自宅の不動産価格が上昇することには、どんなメリットがあるのだろうか。自営業者はともかく、普通の勤労者の場合は新たに事業を行うわけではないので、不動産の担保価値が上がることに、直接的なメリットはない。むしろ地価の上昇はゆくゆくは土地評価額の上昇につながり、固定資産税や相続税の負担が高くなることが懸念されるだろう。

 自宅を投資だと割り切ってみればどうだろう。買った値段よりも売る値段が高ければ、儲かる。毎月の給与と年2回程度の賞与、そして退職金くらいしかまとまった額の金銭的な楽しみがない勤労者にとって売って儲かることは楽しいことと思うだろう。

 しかし、売買の対象が自宅であれば、売った際には家族は家を出て別の家に引っ越さなければならない。引っ越した先でも自宅を「買う」のであれば、儲かった金も含めて再び不動産に金を突っ込まなくてはならないことになる。

 投資であれば「売り時」は大事である。「含み益」だけを見てほくそ笑んでいるのは、少なくとも投資家としてはド素人だ。本格的な投資行動ともなれば、配偶者の都合や子供の学校なんてかまってはいられないはずだ。プロの投資家であればさっさと売り払ってまた「売り時」をじっと待つことになる。家族は常にあなたの投資行動の決断に怯えて暮らすことを余儀なくされるかもしれない。

「含み益」だけ見てほくそ笑んでいるのは投資家としてはド素人 ©iStock.com

 いっぽうで自宅は「住む」だけのためのものと割り切ってみればどうだろうか。住宅の「買い時」は必ずしも値段の上下動する時期とは関係がないはずだ。自分や配偶者の勤務先へのアクセス、子供の年齢や学校、実家との距離、周囲の環境など「投資」ではなく、その家や地域に住むという「効用」を判断ポイントとするべきだ。

 本当に気に入った家や地域であり、自ら納得した価格と、住宅ローンの予定返済額を確実に返済できると考えるのならば、「家が欲しい」と思った「今でしょ」が買い時とも言えるのだ。

 またこのように割り切れば「住む」ことは、何も買わずとも「借りる」という選択肢も出てくるだろう。人間の生活の基本は「衣食住」と言われるが、「衣」と「食」は誰しも「消費」と考えて疑わないのに「住」と考えた瞬間「財産」あるいは「投資」として儲けることを考え出すのもある意味滑稽な話だ。

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