先日おこなわれた総選挙で、一気に注目を集めた立憲民主党の枝野幸男党首。

 枝野氏は「リベラル」「護憲派」「左派」「革新」などいろんな呼び方をされる。いったいどれが近いのだろう。目指しているものは何か?

公明党の二重否定表現を味わうと

 そう思って選挙前にマニフェストを読んでみた。政策だけでなく「言葉づかい」から見えてくるものもあるのだ。たとえば公明党。安倍政権が提唱する憲法への自衛隊明記について。

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《その意図は理解できないわけではありませんが、》

 二重否定表現なのである。

民主党政権時。枝野幸男官房長官と公明党・山口那津男代表 ©共同通信社

「理解できる」じゃ公明党支持者は違和感があるだろうし、「理解できない」では自民党と距離を置くことになる。だからわざわざまわりくどい表現にするしかない。

 この“工夫”については10月15日の東京新聞にも「二重否定表現で首相への配慮を見せる」と書かれていた。憲法論議における与党・公明党の苦しい立場はマニフェストの行間からもうかがえる。

右でも左でもなく。枝野氏と宏池会の「接点」

 では立憲民主党ではどんな言葉づかいがされていたか。私が注目したのは枝野代表の「右でも左でもなく、前へ」というマニフェストの言葉である。

「あれ?」と思った。ある記事を思い出した。今から3年半前の朝日新聞の記事だ。

「保守『本流』誰の手に 1強政権にのまれるハト派」(朝日新聞 2014年2月9日)

というタイトル。

《都内のホテルに3人の自民党幹事長経験者が集まった。加藤紘一、古賀誠、山崎拓。加藤と古賀は名門派閥「宏池会」の元領袖(りょうしゅう)。山崎は加藤の盟友だ。》

 という序盤からはじまる。

谷垣禎一氏 ©石川啓次/文藝春秋

 長老たちは「今の自民党は右に寄りすぎだ」「『保守本流』を担う世代を育てないと」と危機感を吐露し合ったが、名案は浮かばぬまま別れたと続く。すると……。

《宏池会が担ってきた本流としての存在感は薄まる一方だが、そこに目をつけた現職政治家がいた。長老がため息をつきあった3日前の東京・丸の内。業界団体の会合に出ていた宏池会元会長で法相谷垣禎一のもとに、民主党の元官房長官、枝野幸男が歩み寄った。

「谷垣さんたちがしっかりしないと、我々が取りにいきますよ」。枝野の保守本流奪取宣言だった。本流の弱体化と同時にその争奪戦が始まっている。》

 つまり、枝野氏は自民党宏池会(=保守本流、ハト派)がしっかりしないと自分たちがその役割をもらうと宣言したのだ。