「胆嚢、胆管、十二指腸を摘出しても、今まで通り仕事ができました」
ペースは一向に落ちない。
安藤忠雄さんは常時、建築プロジェクトを無数に抱え仕事に邁進している。
現在進行形の目玉プロジェクトとしては、2019年にパリで完成予定の「ブルス・ドゥ・コメルス」がある。商品取引所だった18世紀の建造物を、現代美術館として生まれ変わらせるというもの。
今秋には、児童図書館をつくり大阪市に寄贈する計画も発表した。子どもたちが芸術文化に触れる場を提供したいと、大阪・中之島公園内に建てられる予定だ。
12月18日までは、東京・六本木の国立新美術館で大規模個展を開催中でもある。会場は屋内600坪、屋外200坪に及び、建築をテーマとした展覧会としては破格のスケール。会期中、展示室内で開かれる本人によるギャラリートークが数十回も組まれ、事務所のある大阪と東京を行き来する日々だ。
連日の盛況が続いているので気持ちの張りもあろうけれど、76歳にして、なんたるバイタリティであることか。
元気そのものに見えるが、身体的にはそうではない。がんを患い、復帰した経緯を持つ。
「最初は2009年。病院で検査を受けた際、がんがあると言われました。がんは胆嚢、胆管、十二指腸に広がっているようだとのことで、医師はこれらをどれも摘出しなければいけないと。しかたがない。スケジュールを空けて、手術を受けました」
時間のかかる大手術となったが、なんとか成功した。しばしの静養を経て復帰した。
「これが不思議なことに、今まで通り仕事ができました。ありがたいことです」