御年98歳。「銀行員等(ら)朝より蛍光す烏賊のごとく」「酒止めようかどの本能と遊ぼうか」など、数々の名句を生んだ俳壇の最長老、金子兜太さんが文春オンラインのインタビューに応えてくださいました。俳句の海外事情からノーベル賞、そして俳句の未来まで、一言一句が貴重なお話を伺いました。

金子兜太さん

もう100を超えてるような気がしてます

――98歳になられましたが、先生はよく「自分の歳は7掛け」とおっしゃっています。まだまだという感じですか。

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金子 自分としてはもう100を超えてるような気がしてます。まあ、それを7掛けで70歳ですか。こっちはもういい加減だから、そんな気持ちです。

――戦後前衛俳句をリードしてきた先生は、季語についても柔軟な考えですよね。「妻よおまえはなぜこんなに可愛いんだろうね」などの愛妻句をたくさん作った橋本夢道や、「後ろ姿のしぐれて行くか」などの自由律俳句を残した種田山頭火など、「え、これも俳句なんだ!」という世界も先生はよく評されていて。

金子 俳句は自由。遊びの要素があってこそのものだと思っているんですよ。

――遊びといえば、以前『文藝春秋』では「外国人句会」という企画を3年にわたって開催しまして、先生には日本代表、宗匠としてお力をいただきました。

金子 あれは懐かしい。くだけた会で楽しかったね。参加者はいろんな国の人がいたけども、中国人作家の楊逸さん、非常に家庭的な人で覚えています。それから学者の姜尚中さんでしたか、いい男。詩人のアーサー・ビナードさんは好きな男だったなあ。こちらも気軽に冗談言いながら楽しくやりましたが、みなさん日本語が達者でうまいんだ。

2009年に行われた「外国人句会」。左から時計回りにロマノ・ヴルピッタさん、アーサー・ビナードさん、楊逸さん、金子さん、デピット・ゾペティさん、ピーター・フランクルさん、アントン・ウィッキーさん ©山元茂樹/文藝春秋

――先生も点数が入らないと悔しそうな顔をされて……。

金子 ハッハッハ、悔しかったね。あれは一種の他流試合。だからこちらも軽い敵愾心を持って臨みました。「俺は遊んでねえぞ」っていう本気を出しつつね。