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大山 くまお
2017/12/16

「核兵器は必要悪か、絶対悪か」ノーベル平和賞スピーチが投げかけたもの

──今週の名言・珍言・問題発言

サーロー節子 反核運動家
「核兵器は必要悪ではなく、絶対悪です」

朝日新聞デジタル 12月10日

 10日、ノルウェーのオスロで行われたノーベル平和賞の授賞式で、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の運動をリードした一人である被爆者のサーロー節子氏が受賞講演を行った。

 サーロー氏は受賞講演の中で原爆が落とされた当時の様子を回想しながら、「核兵器と人類は共存できない」「核兵器は必要悪ではなく、絶対悪です」と主張。世界の指導者たちに向けて「核兵器禁止条約に参加し、核による絶滅の脅威を永遠に除去してください」とメッセージを発した。

ICAN国際運営委員の川崎哲さん(左)から折り鶴を受け取り、笑顔のサーロー節子さん ©共同通信社

 ICANのノーベル平和賞受賞について、菅義偉官房長官は「国際社会の核軍縮・不拡散に向けた認識や機運が高まる」とコメント。「日本政府のアプローチとは異なるが、核廃絶というゴールの共有であると思っている」と語った(TBS NEWS 12月11日)。

 また、菅氏は日本が参加していない核兵器禁止条約について、「我が国のアプローチと異なるものであり、署名・批准は行わない考えだ」と発言した。安倍晋三首相は今年の「原爆の日」式典で「非核三原則を堅持し、核兵器国と非核兵器国双方への働きかけを通じ国際社会を主導する」と語ったが、核兵器禁止条約には言及していない(日本経済新聞 8月6日)。9日のイベントに出席したサーロー氏は会見で「日本政府は尊敬と信頼を失っています」と語っている(TBS NEWS 12月9日)。

 核兵器に関する議論は終わりがない。前大阪市長の橋下徹氏は「核兵器が地球上からなくなることが理想」としながらも、「核兵器が廃絶されても大戦は勃発しないという論証が必要」と核兵器廃絶を主張することに否定的な見解を示した(プレジデントオンライン 12月13日)。安倍政権とも関係が深い右派団体「日本会議」の田久保忠衛会長は「安倍首相は核武装の議論も始めるべき」とストレートに主張している(『SAPIO』11・12月号)。

 一方、長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎氏は、「米国の巨大な核戦力をもってしても、北朝鮮の核攻撃を『抑止できない』」と指摘。「『核抑止依存』の安全保障政策を転換するべき」であるとして、日本が核保有国と非核保有国の橋渡しを務める「核外交」を行うことを提言している(現代ビジネス 12月10日)。

 核兵器は悪いもの。当たり前のようだと思っていたことが、いつの間にか当たり前じゃなくなっていた。そんな中、世界に発せられた「核兵器は絶対悪」という言葉は重い。