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笹山 敬輔
2018/01/01

『大予言』初巻に書いた、予言を回避する方法

―― このことは聞いておかなければと思うんですが、五島さんの『大予言』シリーズで繰り返し言われたのは、1999年の7の月ですよね。今、あらためて1999年7月と書かれたことについて、どのように思われていますか?

五島 弁解するわけではないんだけど、私は「大予言」シリーズの初巻の最後に、「残された望みとは?」という章を書いていて、予言を回避できる方法がないか考えようと言ってるんです。もちろん、米ソの対立とか核戦争の恐怖とかがあって、ノストラダムスが警告した状況が来ることは間違いない。それは破滅的なことかもしれないけど、みんながそれを回避する努力を重ねれば、部分的な破滅で済むんだということを書いたんです。だからこの本は、実は部分的な破滅の予言の本なんです。

 

 だけど、私がこの本を書くとき、ノンフィクション・ミステリーという手法に挑戦したことで誤解を生んでしまった。ミステリーが最後にどんでん返しをするように、初めに全滅するんだと書いておいて、最後になって人類が考え直して逆転して、部分的な破滅で済むんだと、それに向かって努力しなければならないと書いたんです。だけど、ここのところをみんな読まないんです。

―― たしかに多くの人が、1999年7月に全滅するんだと信じていましたね。

五島 ただ、私はそのことをちゃんと主張できるけど、当時の子どもたちがね。まさかこんなに子どもたちが読むとは思わなかった。なんと小学生まで読んで、そのまま信じ込んじゃった。ノイローゼになったり、やけっぱちになったりした人もいて、そんな手紙をもらったり、詰問されたりしたこともずいぶんありました。それは本当に申し訳ない。当時の子どもたちには謝りたい。

 

オウムとノストラダムスは関係ありません

―― もう一つ、答えにくい質問をして申し訳ありませんが、五島さんが破滅を回避するために本を書かれた一方で、オウム真理教事件のように、破滅を起こしてやろうという人々が現れました。そのことはどう思われますか? 

五島 オウムとノストラダムスは関係ありません。オウムがノストラダムスの名前を勝手に利用しただけです。本当に悪いやつがいるものです。ノストラダムスの予言で危機を起こすと想定されているのは、米ソの核や生物化学兵器など、もっと大きな軍備です。それを一人の変なやつが命令を下して、しかも権力をやっつけるんじゃなくて、自国の国民にサリンをまいたわけでしょう。そこのところが、どう思うも何も間違いです。完全に間違い。

―― 彼らがノストラダムスを悪用したわけですね。

五島 ただ、それもやっぱり私の本に影響されてあの人たちが何か起こしたというなら本当に私も悪いわけで、それは謝りますけど、よく調べてみると、オウムの麻原たちがよりどころにしたノストラダムスの本というのは私の本と違うんです。責任回避するために言うわけではありませんが、当時たくさんのノストラダムス関連の本が出ていましたから。彼らがよりどころにしたのは、精神科のお医者さんでノストラダムスの解釈書を書いた人がいたんです。その人たちが、自分勝手なことを世の中に流布するわけです。だから、私以外で影響を与えた本が何冊もあるんですよ。でも、ノストラダムスの影響というときにはぜんぶ私のせいになっちゃうんです。今、私がそれを言ってもしょうがないから、あんまり言いたくないんですけど。

 

1999年7月、五島さんは何をしていたのか?

―― 五島さん自身は、1999年7月に何をされていたんでしょうか? 

五島 普通にしてましたよ。そのときの私の気持ちは、もうちゃんと落ち着いていました。1999年の7の月には何も来ないかもしれないと。でも、そういう事実がないということではなくて、多少の時間差の中では必ず何かが起こるはずだと思っていました。そしたら、2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起きた。つまり、2年の誤差があったものの、ノストラダムス予言に近いことが実際に起きた。しかも9・11後、中国の進出や北朝鮮の核など、新しい切実な脅威が起こって、人類危機はいっそう深まってる。

―― 五島さんとしては、今もなお危機は去っていないということですね。現在の思いを率直に語っていただき、ありがとうございます。次に、五島さんが『大予言』へと至るまでのライフヒストリーを聞かせてください。

 

◆後編 五島勉の遺言「終末を思え、道は開かれる」http://bunshun.jp/articles/-/5625 に続く

ごとう・べん/作家。1929年北海道函館市生まれ。東北大学法学部卒。ライターとして『女性自身』創刊時から活躍。1973年に『ノストラダムスの大予言』を刊行、大ベストセラーとなりシリーズ化される。ほかの著書に『アメリカへの離縁状』『幻の超古代帝国アスカ』など。

写真=佐藤亘/文藝春秋