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「夫の浮気を疑う母親が、子どもに会社まで見に行かせて…」家事や家族の世話に追われる、ヤングケアラーの“壮絶な実態”

水谷緑さんインタビュー

note

漫画タイトルの元になったのは?

――『私だけ年を取っているみたいだ。』というタイトルの意味を教えてください。

水谷 これも当事者の方が言っていた言葉です。『ベンジャミン・バトン』という映画がありますよね。おじいちゃんの姿で生まれた人の話。あれが「自分みたい」と言っている方がいたんです。周りと比べて自分だけ「年を取っているみたい」と。

 ほかの当事者の方もみんな「小学生の時、遊ぶのが面倒くさかった」と言っていてびっくりしました。

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©水谷緑/文藝春秋

 大学生の時に他の人と同じように青春することができなかったと言う人もいて。心が冷めてしまっていて、友人と一緒に無邪気に騒ぐことができないんだそうです。

――『ベンジャミン・バトン』の場合は年を重ねるごとに若返っていきますが……。

水谷 年と共に感情が溢れてくると言っていた当事者の方もいましたよ。小さい頃に大変な思いをしたけど、だんだん若返ってくるような感覚というか。まさに『ベンジャミン・バトン』ですよね。

――小さい頃に子どもでいられなかった分、大人になってから取り戻せる人もいるんですね。

水谷 いますね。取材した中で「怒りがない」と言っている方がいて、子どもの頃にたくさん酷い目に遭っているのにどうして怒りがないんだろう、って不思議だったんです。でも先日久しぶりに会ったらすごく怒っていて、人って変われるんだなって思いました。

 その方はカウンセリングに行ったり勉強したり、10年ぐらい自分のことを考え続けてきた積み重ねがあるからだとは思うんですけど。

――子どもの頃の苦しい経験は、重く残ってしまうものなんですね……。最後に、水谷さんがこの漫画を通じて届けたいことを教えてください。

水谷 今、私の子どもは3歳なんですが、もうちょっと大きくなったら読んでもらいたい本になったなと思っています。

 子どもの頃、学校の授業などで「大人は子どもを守るもの」「大人は正しい」と教わってきた気がします。でも実際はいじめてきたり加害してきたり、子どもを搾取しようとする大人もたくさんいるんですよね。そのことを知っておくのは生きる知恵になると思います。

 そして、助けてくれる大人も必ずいます。それを覚えておいてほしいですね。

「夫の浮気を疑う母親が、子どもに会社まで見に行かせて…」家事や家族の世話に追われる、ヤングケアラーの“壮絶な実態”

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