文春オンライン

きれいに三等分したはずなのに…親の遺言で「東京郊外の400坪の土地」を相続、三姉妹の長女が激怒したワケ

『負動産地獄 その相続は重荷です』#4

2023/03/27

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会

note

 怒鳴りこんできたのは長女。三姉妹で等分に相続したはずなのに、なぜ三女が高評価なのだと収まりません。おそらく父親は、三姉妹に等分に相続させることを前提に遺言書を記したと思われるのですが、きれいに三等分に分筆して区分所有にしてしまったのです。こればかりはどうにもなりません。

 三女はにんまり。次女は外国居住でそもそもどうでもよい、という態度。つくづく、遺言書を書くにあたっては、不動産のことをよく勉強しておかないと、相続する子供たちにいらぬ対立を招くこととなると痛感した出来事でした。

漫然とした相続は、大きな苦労のもと

 これからの相続では、遺言書がなく、遺産分割協議になる場合、今まで以上に慎重になる必要があります。地方の実家、流動性を失った郊外ニュータウンの戸建て住宅、老朽化したマンション、別荘やリゾマン、借金まみれの中小ビル、シャッター通り商店街に残された店舗付き住宅、正確な場所も判然としない山林、売るに売れない高級住宅地など、漫然と相続してしまうと後に大変な苦労を背負いこむことになります。

ADVERTISEMENT

 現金や有価証券は金額もはっきりしていてわかりやすい資産ですが、不動産についてはどれだけの価値を持っているか、意外とわかっていない人が多いように思えます。特に昭和・平成の価値観で、とにかく不動産は持っていれば価値がある、最後は売れば換金できるはず、などと思っていると、痛い目に遭います。これからの日本では、売却という「出口」を見失っていく不動産が大量に発生する可能性が高いのです。

 相続させる親のほうは、不動産を今後どうしていきたいのか、誰に譲れば資産として生かされていくのかを考え、必要のない不動産は相続前に換金しておくなどの処置をしておくことです。また相続人も、親の持つ資産をどのような考えで承継するのか、マーケットも含めて事前によく勉強しておくことです。くれぐれももらった不動産でいらぬ苦労をしないように。

きれいに三等分したはずなのに…親の遺言で「東京郊外の400坪の土地」を相続、三姉妹の長女が激怒したワケ

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春新書をフォロー