昨年末、東京中心部のオフィス街・大手町のビルで火事が発生した。火元は日経新聞社東京本社ビルのトイレ。この火事で男性が1人亡くなった。1週間後、警視庁は男性の身元を発表。亡くなる1カ月ほど前まで東京都練馬区で日経新聞の販売所長をしていた水野辰亮さん(56)だった。水野さんは、焼身自殺をした可能性が高いという。新聞販売店関係者はこう推し測る。

「今、新聞販売店は本当に苦しい状況に追い込まれている。水野さんは本社に対して『抗議の自殺』を遂げたのだ」

 

 新聞の読者離れが言われ始めてもう20年近く経つが、特に直近10年は業界全体の凋落が激しく、販売店への重圧は増すばかり。実は近年、表面化はしていないものの、新聞販売店主の自殺は多発している。前出の水野さんだけに限った話ではないのだ。

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『小説 新聞社販売局』で、新聞業界の闇を描いた元全国紙社会部記者の作家・幸田泉氏が、多発する自殺の実態に迫った。

水野さんが経営していた販売店

 2014年7月に山形県内で自殺した読売新聞の販売店主を知る別の販売店主は、「経営難で従業員に給料を払えなくなっていると聞いていたが、まさか自殺してしまうとは……。同じ苦労をしている仲間として、彼がそこまで困っているのに気付いてあげられなくて申し訳ない」と悔やむ。

 取材を進めていくと、朝日新聞や毎日新聞でも販売店主が自殺した事例があった。彼らが死を選んだ背景には何があったのか。幸田氏の詳細なルポの全文は、2月10日発売の『文藝春秋』3月号に掲載されている。

文藝春秋 2018年 03 月号 [雑誌]

文藝春秋
2018年2月10日 発売

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