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インフルエンザの「治癒証明書」に意味がない理由

いい加減にやめませんか? むしろ害があるだけです

2018/02/13

 インフルエンザが猛威をふるっています。この冬も幼稚園や学校、会社に言われて、病院に「治癒証明」をもらいに行ったという人がいるのではないでしょうか。インフルエンザと診断された人が通園・通学・通勤を再開するにあたって、お医者さんのお墨付きを求められることが結構あると聞きます。

感染症の専門家の間では前々から指摘されていた

 しかし、実は感染症の専門家の間では前々から、「インフルエンザの治癒証明は意味がない」という声があるのをご存知だったでしょうか。最近も、医師・医療従事者向けサイト「日経メディカル」に「インフルエンザ治癒証明に意義なし。学校や保育所に『求めることを控えて』と呼び掛ける県も」(2018年1月11日付)という記事が載っていました(全文を読むには要会員登録。無料です)。それによると沖縄県では、「県下の教育機関や民間事業所に対し、インフルエンザの治癒証明を求めることは『意義がなく、控えるよう』ホームページ上で呼び掛けている」のだそうです。

 なぜ「意義なし」なのでしょうか。インフルエンザに罹ったとしても、学校保健安全法でも定められている通り、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過し健康が回復すれば外出の自粛を終了することが可能であると考えられて」いるからです(沖縄県ホームページ「インフルエンザ罹患に伴う治癒証明を求めることについて」より)。

そもそも医師が治癒を証明すること自体が無理

 つまり、これを守って1週間から10日ほどゆっくり休めば、わざわざ医療機関に行って治ったと証明してもらわなくても、通園・通学・通勤を再開してかまわないのです。法律もインフルエンザに関しては、治癒証明書の提出を求めてはいません。そもそもインフルエンザの検査は100%正確なものではなく、医師が治癒を証明すること自体が無理だと言われています。

 それなのに、学校や会社が治癒証明の提出を要求し、元気な生徒や大人が医療機関に殺到したらどうなるでしょうか。病院には重い病気やケガを負って、一刻も早く治療しなければ命に関わる人がたくさんいます。ただでさえ病院は人手不足のところが多いのに、治癒証明の診断に時間を取られると、重症患者の診療に支障を来す恐れがあります。実際に医療機関の中には、治癒証明の発行を断っているところもあります(例:東京高輪病院)。

お年寄りや難病治療中の人に感染させ、新たな病気をもらってくる危険性も

 それに、もしインフルエンザが十分治りきっていないのに、早く学校や会社に行きたいからと病院に行った場合どうなるでしょう。病院には、体力の落ちたお年寄りや呼吸器疾患、心疾患、腎不全、抗がん剤治療中の人など、抵抗力の弱い人がたくさんいます。そんな人たちにインフルエンザを感染させてしまったら、病状を悪化させて命にも関わります。

ドラッグストアにズラリと並ぶマスク ©時事通信社

 それだけではありません。病院には嘔吐や下痢を起こすノロウイルスなど別の感染症にかかっている患者さんも来ています。せっかくインフルエンザが治ったと思ったら、病院に行ったばっかりに、「別の病気をもらってしまった」ということにもなりかねません。このように、治癒証明をもらいに医療機関に行っても、いいことはほとんどないのです。

 そもそも、インフルエンザにかかった場合に最も大切なのは、先ほどの基準にもあった通り、しっかり治るまで家でゆっくり休むことです。「インフルエンザかな?」と思ったら、「早く検査をしてもらって、薬をもらうために一刻も早く病院に」と思っている人も多いのではないでしょうか。 確かにインフルエンザは重症化すると肺炎や脳炎を起し、命にも関わりかねないので、甘く見てはいけない感染症です。とはいえ、ふだんから健康な人であれば、ほとんどの人が薬を飲まなくても、1週間から10日ほどで治ってしまいます。