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梶原 紀章
2018/02/18

「チョコを渡したい選手」ランクで驚異の大躍進を遂げたロッテ・原嵩

文春野球コラム オープン戦2018

 バレンタインデーの2月14日に合わせて千葉ロッテマリーンズはロッテ「ガーナミルクチョコレート」とタイアップして行った「あなたがチョコを渡したい(独身)選手」の投票結果を発表した。1位は成田翔投手で3万8251票。昨年に引き続きの連覇である。メディアの間で“秋田の玉三郎”の異名を持ち、地元テレビ局に出演すれば地元視聴率が5%上がるという伝説を持つ若者なので、誰もが納得の投票結果だ。注目すべきは2位。3万3099票を集め、一時はトップの座にいたのが原嵩投手。昨年は1331票だから、驚異の大躍進となった。

「自分でもビックリしています。チームメイトからは組織票だとか、自分で投票をしているのではないかとからかわれましたけど、本当に嬉しいです。今は苦しい時期なだけに励みになります」

「あなたがチョコを渡したい(独身)選手」で2位となった原嵩 ©梶原紀章

「全治9カ月」と言われた苦しい日々の励みに

 投票結果を伝えると原は笑顔を見せ、何度も「本当に励みになりました」と繰り返した。プロ3年目の右腕は現在、リハビリの真っ最中。昨年11月10日に神奈川県横浜市内の病院にて右肩鏡視下手術、および右肘神経移行術を受けた。全身麻酔の大手術。起きたら病室だった。12月は安静でストレッチを行うのが精いっぱい。1月にようやくエアロバイクを漕げるようになり、2月のキャンプから肩の可動域を広げるトレーニングと下半身強化を行えるところまでたどり着いた。キャッチボール再開は5月か6月。ブルペン入りは8月ぐらいが目安で実戦復帰を思い描くのは10月の宮崎で行われるフェニックスリーグ。全治9カ月と言われた苦しい日々の中で、バレンタインデー企画で生まれた奇跡のような出来事が若者の心を救った。

 陸上競技場メインスタンドの階段をひたすら昇り、降りる。それが原の石垣島春季キャンプの主要メニュー。59段ある階段を一日50往復。2時間ほどかけてじっくりと下半身を鍛える。メインスタンドの最上段からはメイン球場やサブグラウンド、そしてブルペンも見渡すことが出来る。他の選手たちがグラウンドでプレーをしている姿を見ながら黙々とまた階段を下りる。静かな日には小鳥のさえずりと共に色々なところから仲間たちの元気な声が聞こえる。ブルペンからはミットにボールが収まり、捕手が「ナイスボール」と応えている声も耳に出来る。そのたびに胸が締め付けられるほどの孤独と悔しい気持ちに苛まれそうになりながらも自分を奮い立たせる。そんな毎日。支えとするのは3万3099票だ。