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その瞬間背筋が凍り…ライオンズ中継32年、NACK5の”母”がやらかしたとんでもない失敗

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/08/27
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松坂大輔を見守り続けて……

 多くの選手を見てきたが、私にとって松坂大輔投手は特別な存在だ。

 1998年8月、オリックス戦の中継のためにたまたま関西にいた私は、甲子園で横浜高校の松坂投手がノーヒットノーランを達成した決勝戦を観戦することができた。「超高校級」と聞いていたが、堂々としたプロ顔負けの投球スタイルに度肝を抜かれた。

 当時「怪物」という言葉が一人歩きしていたので、ライオンズ入団が決まった時は嬉しいよりも少し怖かった。常にマスコミに追われ注目の的だったが、奢ることなく誰に対しても誠意をもって対応する大人の姿と、取材やインタビューでたびたび顔を覗かせる、お茶目で人懐こい普通の青年とのギャップに徐々に魅了されていった。

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 メジャーリーグから帰国後、ソフトバンクの3軍キャンプを訪れたことがあった。怪我で苦しい状況にありながら一言も弱音は吐かず、こちらが驚くほど前向きな復帰計画を語ってくれた時は涙が溢れそうになった。

 中日に移籍した2018年の交流戦。所沢での凱旋登板の前日ベンチ裏で再会し、所沢の思い出や翌日に控える先発の喜びを嬉しそうに語ってくれた。しかし翌日の試合開始直前、突然のアクシデントで先発投手変更の場内アナウンスが流れると球場中がどよめいた。苦しくて長いリハビリの日々。やっと感じた復帰への手応え。あの時の本人の心境を想像すると胸が苦しくなる。

 その2年後、14年ぶりにライオンズに復帰。メットライフドーム(当時)で行われた引退試合はバックネット裏で静かに見守った。マウンドに上がる時の姿勢、歩き方の癖は入団した当時と変わらず、軽やかで少しはにかんだ笑顔が印象的だった。セレモニーでの晴れやかな表情を見て、「お疲れ様」……という言葉しか浮かばなかった。松坂投手の入団から引退まで見守ることができたこと。これは私にとって大きな誇りである。

「遊び心」と「好奇心」を忘れずに

 現在番組は基本、日曜日のみの「SUNDAY LIONS」にリニューアルし、2020年から大宮の本社スタジオと球場を結ぶ二元中継を行なっている。

 スタジオから、ライオンズと野球を心から愛するお笑い芸人「三拍子」久保孝真さん(41)が番組を盛り上げ、加藤暁アナウンサー(51)と小笠原聖アナウンサー(44)が球場で実況を担当。そして今シーズンから滝島杏(あん)さん(25)がレポーターに加わった。培った経験を後輩レポーターに伝えることも私の使命であるが、とにかく失敗を恐れず、代々受け継がれてきた「遊び心」と「好奇心」を忘れず前向きに頑張ってほしい。

お笑い芸人「三拍子」久保孝真さん(左)とレポーターの滝島杏さん ©吉野麻子
文春野球西武でも度々登板している小笠原聖アナウンサー ©吉野麻子

 古い話が中心となったが、最近ではドラフト1位の蛭間拓哉選手と育成から這い上がった豆田泰志投手の活躍が嬉しくて仕方がない。彼らが中心となるであろう未来のライオンズを想像しながら、これからも母のような気持ちで見守っていきたい。

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