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文藝春秋4月号「終活・エンディング特集」資料請求&プレゼント

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最後まで自分らしく生きるための人生設計を始めよう

家族の形や死生観が多様化していくなかで、終活をどう進めていくべきか。人生後半期の暮らし方という観点から終活の助言・支援に携わるNPO法人ら・し・さ副理事長の山田静江さんに話を聞いた。

自分と周囲の人が前向きに生きる準備

終活アドバイザー 
山田 静江氏(やまだ・しずえ)
CFP®認定者、NPO法人ら・し・さ副理事長。2004年に同NPOで「ラスト・プランニングノート(ら・し・さノート®に改訂)」を作成し、ノートを活用した終活の普及活動を行っている。
終活アドバイザー 
山田 静江氏(やまだ・しずえ)
CFP®認定者、NPO法人ら・し・さ副理事長。2004年に同NPOで「ラスト・プランニングノート(ら・し・さノート®に改訂)」を作成し、ノートを活用した終活の普及活動を行っている。

「終活を始めるタイミングは人それぞれですが、早すぎることはありません。むしろ認知症などのリスクが高まる75歳までに、契約や遺言などを含めた準備は終わらせておくほうがいいでしょう」

 終活アドバイザーの山田静江さんはこう助言する。

「終活とは、人生後半期を悔いなく生きるためのライフプランニングです。家族の在り方が変化し、さらに高齢化が進んだ現在では、医療や介護の受け方、財産管理、葬儀や墓の手配などを家族に任せることは難しくなっています。自分自身が思いどおりに生き、そして自分を支えてくれる人たちを死後に困らせないための準備、それが終活です」

 終活とひと口に言ってもその内容は多岐にわたる。山田さんは「まずはエンディングノートを書くことから始めてみては。記入欄を埋めたノートは、そのまま終活の手引きになります」と勧める。

 エンディングノートには過去・現在・これからの情報を整理・記録して、これからの希望をまとめておく機能がある。「特に、自分を支えてくれる人の情報や、預金や保険など資産関係の情報、病歴やかかりつけ医・かかりつけ薬局といった健康関連情報を記録しておくと、さまざまな手続きを進める際に役立ちます」と山田さん。

 またエンディングノートに書いた内容を実践してくれる人を探しておくことも必要だ。

「老後には頼り・頼られる人がいるかどうかが非常に重要です。例えば、終活のつもりでお墓を用意してあったとしても、死後事務を担う人にその情報が伝わらなければ、そのお墓に入ることはできません。特におひとりさまであれば、近くにお世話を頼める人がいなかったり、迷惑をかけたくないと考える人もいるでしょう。そのときは専門家と死後事務委任契約などを結び、手続きを託しておく必要があります。医療機関への入院などに際して、身元保証人をどう用意するかという課題もあります。おひとりさま向けのサポートをうまく使って備えておきましょう」

資産が1億円あっても家の傾きを直せない

 認知症を発症し判断力が低下すると、あらゆる契約行為ができないため自宅の売却をはじめとした資産管理は困難になる。実際に山田さんが相談を受けたケースでは「夫の資産は約1億円あるけれど、夫が認知症になってしまったので、使えるお金はわずかしかなく、家の傾きも直せない」と困る家族もいたという。

「判断能力が低下した後では法定後見制度を使うしかありませんが、ご家族にとって使い勝手が良いとはいえません。認知症になる前であれば、さまざまな選択肢があります」と山田さん。

遺言を活用して最後の社会貢献

 相続に関してもやはり、認知症になる前に遺言などで準備しておくほうが安心だ。

「財産を相続する人が認知症になっている場合、遺産分割協議ができません。例えば高齢の父親が亡くなり、母親と子どもで遺産分割協議をしようと思ったときに問題がわかった……ということもあり得るわけです。遺言といえば相続の紛争防止というイメージがあるかもしれませんが、これからは財産をスムーズに受け継ぐための準備としても遺言が必要になってくると思います」と山田さんは話す。

 また遺言を活用して遺贈寄付を検討する人も多いという。

「遺贈寄付であれば、死後の寄付ですから生活費や老後資金を心配せずに思いどおりの寄付が可能です。特におひとりさまの場合は、相続人がおらず遺言書もない場合、財産は国庫に帰属することになります。せっかくなら人生最後に社会貢献をしたいと、遺贈寄付を選ぶ方も多いですね」

「終活」という言葉が定着した今でも、「終活は葬儀やお墓の準備」ととらえる人は多い。山田さんはそれらは終活の一面に過ぎないと指摘する。

「繰り返しになりますが、終活とは人生後半期を自分らしく、前向きに生きるための設計図です。自分史を作るつもりで、まずは楽しみながらエンディングノートを書いてみる。そんなところから一つずつ、始めてみてください」

「住み替え」という選択肢
資金計画や要介護の対応を 具体的にイメージする
 元気なうちに住み替え先を探すのであれば、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などが候補になる。元気な人向けの「自立型」の場合は、居室が広く、各部屋にミニキッチンや浴室などの住宅設備が揃っていることが多い。設備の充実ぶりはホームによるが、便利になるほど月額利用料は高くなる。どれだけ費用がかかるのか、年金や貯蓄で対応できるのかなどのお金のシミュレーションは必須。また、要介護になるとそれまで住んでいた施設を退去し、系列の介護施設などに移らなければならないケースもある。要介護になっても住み続けながら介護を受けられるかどうか、重度の認知症や緩和ケアに対応できるのかどうかなどをきちんと調べておこう。