2016年末にステージ3の胃がんと診断されたプロ野球・広島カープの赤松真人選手(35)。半年間の抗がん剤治療を経てリハビリとトレーニングを重ね、3月に実戦への復帰を果たしました。前例のない「がんサバイバーの野球選手」という高いハードルに挑みながらも、「自分はラッキーだった」と前を向いてトレーニングに励みます。どうやってモチベーションを保ち続けているのか。赤松選手の思いを聞きました(前後編インタビュー。後編に続きます)。
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復帰戦では、声援も聞こえないくらい緊張して足が震えた
──1年4ヵ月ぶりの実戦復帰おめでとうございます。手術後初となった3月4日の試合では、「代打・赤松」とコールされた瞬間に、相手側スタンドからも大歓声があがりました。どんなお気持ちでしたか。
赤松 正直、声援も聞こえないくらい緊張して足が震えました(笑)。やるからには結果出したいじゃないですか。でも結果を出せる自信もまだ持てないし、それより「自分のスイングちゃんとできるかな」という不安も大きくて。
──赤松選手ほどのベテランでも、久しぶりの実戦は緊張するんですね。
赤松 もともとバッティングの選手ではないので、病気になる前もそんなに打席数が多いわけではなかったんです。なのに、1年間の闘病生活を経て帰ってきたのがいきなりの代打出場だったので、余計に緊張しました。打席に入った時の感覚もだいぶ薄れていたので、早く現場感覚を取り戻したいです。
──うまく球が投げられないなど、体が思うように動かないと悩んでいたそうですが。
赤松 「緊張で体がうまく動かせない」というのもありましたが、まだ体が本調子ではないので、余計にバットが重く感じました。あと、打席に立った時に「こんなにピッチャーの球って速かったっけ」と(笑)。
──今はご自分の中で、パフォーマンスは100点中何点くらいですか。
赤松 いやあ、よくて50点くらいだと思います。マックスで。気温や天候など、その日によって体調が変わるんですよ。手術で胃を半分に切除しているせいか下痢になりやすくて、まだ腹筋に力が入りにくいですし、吸収がよくないので「食べて体をつくる」ということがなかなかできないのも悩みです。
──食べられないから、体をつくれないというのは苦しいですね。
赤松 通常、健康な人は100%の消費カロリーを全部運動で使ってしまっても、ストックがあるので動けるんですが、僕はストックがないので動けないんです。それを考えながら動かなきゃいけないのと、動けない分を食べて補強するということがまだできないのが、課題です。