昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「練習は嘘をつかない」 好調ライオンズで結果を残す選手の共通点

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/05/17

 ここ最近、「練習は嘘をつかない」という言葉を実感するできごとが続いた。。

 5月9日、3、4月度月間MVP賞が発表された。打者部門では、同月リーグトップの11本塁打、33打点、得点圏打率.560などを記録した山川穂高選手が受賞。昨年8月度、9、10月度に続く、年またぎの3回連続受賞という快挙を成し遂げた。つまり、この期間、常に「パ・リーグNo. 1打者」に君臨し続けているということである。この偉業達成に、本人は「僕は打つしかない人間だから(達成できた)だと思います。他の選手は守備や盗塁などでもチームに貢献できるけれど、僕は打たなければ試合に使ってもらえない。『お前がプロで生き残るためには打つしかないぞ』ということだけは二軍にいる時からずっと言われてきたことなんです」と、打棒にかける強い思いを口にする。

 今季は開幕から四番に座る。チーム勝敗に直結する重責を担う打順だけに、「メンタルを保つために大事なことは?」と、報道陣から問われると、一言、「練習です。練習しかないです」ときっぱりと答えた。

 山川選手には昨年7月頃から続けているルーティンがある。試合前、誰よりも早くグラウンドに降りてきて、ストレッチやウォーミングアップを済ませ、早出の打撃練習。試合後は室内練習場へ向かい、マシンを相手にひたすらバットを振る。コンディションなどによって、その強度に日々違いはあるが、それでも、試合に挑む毎日の取り組みだけは決して怠ることはない。「練習さえしておけば、言い訳がなくなります。結局、不安要素を残したまま試合に入ると、終わった後、後悔も多いと思う。後悔をなくすために、そして上手くなるために練習を重ねる。試合で打てても打てなくても、『全部自分のせいだ』と思って練習するのが一番大事だと思います」。この強い信念に基づいた精進こそが、昨年8月からの好成績を支えているのだと、深く納得させられた。

3、4月度月間MVP賞を受賞した山川穂高 ©文藝春秋

自己改革で初の一軍昇格を掴んだ金子一輝

 もう1つが、高卒5年目の金子一輝選手が5月12日、初めて一軍昇格を果たしたことだ。「今年こそ一軍に上がりたい」と、昨年までの4年間も、毎年、目標に掲げていた。だが、その取り組みは日々与えられた練習メニューをこなすだけ。次々入ってくる後輩たちが、強制的に個別メニューで振り込みをし、成長している姿を目にしても、負けじとバットを振る姿を表に見せることはなかった。「正直、去年までの一輝の練習や試合に臨む姿勢じゃあ、厳しかったと思う」と、二軍首脳陣も口を揃えて振り返る通り、打率は常に2割前後と低迷した。

 しかし、今年はキャンプ前から目の色が違っていた。昨年末の球団納会で、昨季一軍で結果を残した先輩・水口大地選手から、「非力で、振り切れる力がない僕は、タイミングの取り方などを工夫して上にいることができた。僕ができたんだから、一輝だって頑張ったらやれる。僕は見てるから」と励まされ、自分に期待してくれている人の存在のありがたさに感化。自己改革を決意した。

「もう5年目。正直、今年結果が残らなければ、というところまで来ていると思います。もちろん、『結果を出さなきゃ』という思いもありますが、それ以上に、この一年間、一日一日やれることをしっかりやりきろうと、すべてをポジティブに考えられています」

 キャンプから、星孝典二軍コーチにお願いし、練習後の約1時間に及ぶティー打撃練習を続けてきた。また、試合では、「走らせてください」と自ら願い出て、自分の判断で走れる“グリーンライト”の権利をもらった。「チームの中で、誰よりも練習しているつもりですし、バットを振っているつもりです」。自分の練習に自信が持てるようになると、「試合での結果や内容に対して、より意識するようになります。そうすると、準備の仕方や、1打席に対する悔しがり方も変わってきて、さらに良い結果を出すにはどうしたらいいのかと考えるようになるので、さらに練習もしっかりします」と、赤田将吾二軍コーチ。そのプラスのサイクルは金子一選手にも現れ、チームトップの打率.333、リーグトップの盗塁数9と(いずれもイースタン・リーグ)、驚くほどはっきりと結果に直結した。そして、念願の一軍昇格を掴んだのだった。