今、静かに売れている「事典」がある。『日本現代怪異事典』。日本文学の学術書を主に扱う笠間書院が今年1月に出版した。収録された怪異は実に1092項目! 「こっくりさん」から「ノストラダムスの大予言」、「異界駅」まで一人で解説し尽くした著者の朝里樹(あさざと・いつき)さんに怪異トレンドの今と昔について話を聞いてみました。

朝里樹さんは1990年生まれの28歳

現在5刷。こんなニッチな本が、こんなに反響あるなんて

朝里 取材時間を私の帰宅時間に合わせていただいてすみません。公務員をしているものですから……。

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――怪異好きの公務員さんなんですね。

朝里 昔から妖怪が大好きで、この事典も趣味が高じてのものです。

――ツイッター界隈で話題になって、じわじわ売れているようですけど、いま、版はどれくらい重ねているんですか?

朝里 現在5刷です。こんなニッチな本が、こんなに反響あるなんて想像していませんでした。

――そもそもは同人誌のかたちで世に出ていたそうですね。

朝里 380ページくらいある分厚い同人誌で、ほぼこの事典の原型ですね。私は地方在住ですし、コミケで売るために出かけられなかったんです。それでネットで個人販売をしていたのですが、そのツイートがずいぶん広がって、いつの間にか怪異好事家の間で話題になっていました。

 

――買い求める人ってどういう人たちだったんですか?

朝里 自分で発送作業するので分かったんですが、なぜか女性が多かったですね。8割は女性でした。考えてみると、女性週刊誌って「本当にあった怖い話」の特集とか好きですよね。学校でも女子のほうが「こっくりさん」や「紫鏡」の話を夢中にしていたと記憶している方も多いんじゃないでしょうか。

資料本を出しながら「女子のほうが怖い話は好きだったんじゃないでしょうか」