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なぜ流通するウナギの半分以上が「違法」なのか

ニホンウナギ絶滅の危機が叫ばれる中、密漁・密輸が絶えない理由

2018/08/01
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 国の行政によって漁業管理が行われているサンマやスルメイカ、マサバなどと異なり、ウナギ漁業は都道府県の漁業調整規則に従って管理されています。いずれの都道府県の漁業調整規則を見ても、およそ20センチメートル以下のウナギの採捕は禁じられています。

 養殖に用いるニホンウナギの子ども、シラスウナギの全長はおよそ6センチメートルであるため、このサイズ制限によって、シラスウナギの採捕は全面的に禁止されていることになります。このため、都道府県知事より特別採捕許可を受け、サイズ制限の適用を除外されることによって初めて、シラスウナギの採捕を行うことが可能になります。

徳島県で行われているシラスウナギ漁の様子 ©AFLO

報告された採捕量は総量のわずか37%

 日本国内の養殖場に池入れされ、養殖されるシラスウナギは、国内で採捕されたものと、輸入されたものに分けることができます。国内の養殖場から報告された、養殖に用いたシラスウナギの量(池入れ量)の総計から輸入量を差し引くと、その差は国内で採捕されたシラスウナギということになります。

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 2014年末から2015年までの漁期(2015年漁期)を例に計算してみると、国内の養殖場に入ったシラスウナギは18.3トン、輸入された量が3.0トンなので、国内の採捕量は15.3トンです。

 この15.3トンはどのように採捕、流通されたのでしょうか。日本国内におけるシラスウナギ採捕は特別採捕許可に基づいて行われるため、採捕量を報告する義務が付随します。2015年漁期に報告された採捕量は全国総計で5.7トンでした。これは、国内採捕量15.3トンの、わずか37%でしかありません。残りの63%は、無許可で行う密漁や、許可を受けた採捕者の過小報告(無報告漁獲)など、違法行為によって流通しているのです。

 一方、輸入された3.0トンはどうでしょうか。2015年漁期に輸入された3.0トンのシラスウナギは、そのすべてが香港から輸入されています。香港でシラスウナギ漁が行われていないことなどの状況証拠から、これらのシラスウナギは、台湾や中国本土から香港へと密輸されたものであることが、強く疑われます。

2015年漁期に「池入れ」されたシラスウナギ(合計18.3トン)の内訳 ©海部健三

「違法なウナギ」に遭遇する確率は50%以上

 国内の密漁や無報告漁獲と合わせると、2015年漁期に国内の養殖池に入れられたシラスウナギ18.3トンのうち、約7割にあたる12.6トンが、密輸、密漁、無報告漁獲などの違法行為を経ていると考えられます。これら違法行為を経たウナギと、そうでないウナギは養殖場で混じり合い、出荷される段階では、業者でも区別できません。

 このため、老舗の蒲焼き店でもチェーンの牛丼店でも、また、高級デパートでも近所のコンビニでも、国産の養殖ウナギであれば、同じように高い確率で違法行為を経ているウナギに出会うことになります。消費のほとんどを占める養殖ウナギについて、違法なウナギを避ける確実な方法は、現在のところ、「ウナギを食べない」以外にありません。