昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

今必要な主将・内川聖一の力 2010年の奇跡をもう一度

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/09/23

 たった1週間ほど前は、ニヤニヤしながら皮算用をしていた。「全部勝てば0.5差、まあ最低でも勝ち越せばいい」なんてワイワイ言い合っていた。

 15~17日の西武3連戦。まさか全敗するとは、正直計算外だった。数字上はかなり厳しい状況となった。天国から地獄である。一度は夢見てしまった心を思いっきりエグられた。ホークスナインもショックだったに違いない。しかし、彼らは「諦めるものか」と前を向いて戦っている。18日のロッテ戦。雨の降り続くZOZOマリンスタジアムで、執念の逆転勝利を見せてくれた。20日の日本ハム戦も初回に4点を先制されながら、試合中盤にひっくり返し、なお追いつかれても引き離した。まさしく、気持ちのこもった戦いぶりで、西武戦以降は一度も負けることなく連勝を続けている。

 これから先、西武との直接対決はまだ4試合も残っている。何が起こるか分からない。そうだ、ホークスはそれを知っているチームじゃないか。

 8年前の奇跡。あの時だって西武ライオンズを相手に、残り6試合で「3.5ゲーム差」をひっくり返してリーグ優勝を成し遂げた。その奇跡を、再現する時だ。

 一体、何が、どのようにしてミラクルは起きたのだろうか。今一度振り返る必要がある。

8年前の奇跡を振り返る

 まず2010年は、秋山幸二監督2年目のシーズンだった。この年は投手陣がチームを引っ張った。和田毅が17勝(8敗)で最多勝、杉内俊哉も16勝(7敗)を挙げた。リリーフ陣は盤石の攝津正、ファルケンボーグ、馬原孝浩がいて、そこに65試合登板の甲藤啓介が台頭してきて「SBM48」が完成した。若手だった森福允彦、ベテランの金澤健人の活躍などブルペン力を誇ったシーズンだった。

 しかし、屋台骨に疲れが見えた後半、チームは失速した。一時は首位に立つも8月を11勝12敗2分と負け越した。西武に逆転を許してシーズン終盤を迎えたのだった。

 9月、西武にマジック点灯を許した頃もまだエンジンがかからない。日本ハム、ロッテを相手に続けて1勝2敗。そのまま18日からの西武との直接対決3連戦に突入した。

1位 西武     76勝60敗1分 残り7
2位 ソフトバンク 71勝62敗5分 残り6 3.5ゲーム差

 天王山の前、主将の小久保裕紀は「目の前で胴上げを見たくない」と話していた。西武はマジック4で福岡に乗り込んできた。ホークスとして奇跡を起こす以前に、2つ負ければ終戦という状況を阻止することが現実的な第一目標となっていた。

 西武に苦戦していたことも背景にあった。対戦成績は7勝14敗。しかし、7月の鷹の祭典では3連勝を決めていた。ホークス球団も何とか後押ししようと、2010年の鷹の祭典カラーである「カチドキレッド」にちなんだ赤いものを身に着けて来場してほしいと呼びかけた。

 かくしてホークスは奇跡に向かって動き出した。