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平野啓一郎×小川洋子「フィクションだけがもつ力とは」

他人の人生を生きる――『ある男』とは何者か

人間にとって過去とはなにか――。
​究極の問いを突きつける平野啓一郎氏の最新作『ある男』。平野氏が「自分と違う書き方をされている作家」と考える小川洋子氏とともに、今の時代において、フィクションだけがもつ力、小説にしかなしえないことについて語りあった。

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小社ホールにて ©平松市聖/文藝春秋

ギタリストは小説家に近いところがある

小川 『マチネの終わりに』が映画化されるそうですね。主人公のギタリスト・蒔野役はどなたが?

平野 福山雅治さんです。

小川 それはおめでとうございます。小説に登場する曲を集めたCDも出ているんですね。

平野 はい。日本のクラシックギター業界は活況を呈してるんですが、それでも派手な世界ではなくて、ピアノとかに比べると、コンサート会場も3、400人ぐらいが限度なんです。

小川 そんなに大きな音が出る楽器ではないですものね。

平野 だから映画化も決まって、取材でお世話になったギター界の人たちも喜んでくれてます。

小川 ギターの持つ独特な親密さが、この小説の世界を根底で支えていると感じます。

平野 ギタリストは小説家に近いところがありますね、確かに。生活も、個人事業主的なところがありますし。クラシックギターはほとんどソロか、2人ぐらいで演奏する。1曲の全体に責任を持たないといけないし、活動も、スケジュール管理の仕方などを見ていると、わりと想像しやすかったです。

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