政府は11月2日、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理・難民認定法(入管法)改正案を閣議決定した。経済界の要望に応えた形で、政府与党は今国会での成立を目指す。入管法改正案は「移民政策」とはどう違うのか? 安倍首相らの発言をまとめてみた。
日本で働く外国人労働者は過去最多の約127万9000人
安倍晋三 首相
「政府としては、いわゆる移民政策をとることは考えていない」
産経ニュース 10月29日
安倍晋三首相は10月29日の衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表の質問に答え、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管法改正案について「移民政策」ではないことをあらためて強調。「深刻な人手不足に対応するため、即戦力になる外国人材を期限付きで受け入れるものだ」と説明した(毎日新聞web版 10月29日)。
厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者は昨年10月の時点で過去最多の約127万9000人に上る。経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の最新(2015年)の外国人移住者統計では、日本への移民流入者数は世界4位に上昇した。政府はこれまで原則として就労目的の在留を認めておらず、高度な専門人材に限って受け入れてきたが、実態としては外国人技能実習生や留学生のアルバイトが多くを占めていた。単純労働を含む外国人労働者の在留を認める今回の入管法改正は大転換となる。
10年滞在すれば永住への道が開ける新在留資格
一方、安倍首相はこれまで再三、「移民政策」を否定してきた。2014年10月1日の衆院本会議では「安倍政権は、いわゆる移民政策を取ることは考えていない」と発言(産経ニュース)。今年2月20日に行われた経済財政諮問会議でも「安倍内閣として、いわゆる移民政策をとる考えはありません。この点は堅持します」と発言している(首相官邸ホームページ 2月20日)。しかし、深刻な人手不足を解消するための外国人労働力の受け入れは必要不可欠となっていた。
入管法改正案は、新たな在留資格「特定技能」を2段階で設ける。「特定技能1号」は特定の分野で「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に与えられる。在留期間は最長で通算5年、家族の同伴は認めない。「特定技能2号」は「1号」を上回る「熟練した技能」を持つと認められた外国人に与えられる。在留期間に上限はなく、家族の同伴も認められる。10年滞在すれば、永住権の取得要件の一つを満たすことになり、永住に道が開ける。
受け入れは人手不足が深刻化している分野に限定され、介護、造船、航空、農業、漁業、自動車整備、外食などの14業種が検討されているが、新たな外国人労働者の数は数十万人に上ると見込まれている。おまけに……。