12月6日、改正水道法が衆院本会議で可決され成立した。これで水道事業の民間委託がしやすくなる。しかし、水道の「民営化」については海外でトラブルが相次いでおり、野党は「審議不十分」などと反発していた。本当に日本の水道は大丈夫なのか? 関係者の発言を追ってみた。 

暴動、コレラ蔓延、再公営化……他国で相次ぐトラブル

根本匠 厚生労働相
「海外の問題事例を掌握して、それを乗り越えるための仕組みを提案している」
FNN PRIME 12月4日

 改正水道法は、自治体が運営する水道事業の経営悪化を受け、市町村の広域連携や運営の民間委託などによる経営基盤の強化策を盛り込んだもの。コンセッション方式と呼ばれる民営化の手法を自治体が導入しやすくなる。

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衆院本会議で出入国管理法改正案が賛成多数で可決し、退席する安倍晋三首相(手前)と根本匠厚生労働相 ©時事通信

 コンセッション方式とは、自治体が公共施設や設備の所有権を持ったまま、運営権を長期間、民間に売却する制度。自治体は水道事業者という位置づけのままなので「水道民営化」という言葉を使うことに反対している人もいる。とはいえ、運営権自体が民間企業に移るため、自治体には運営に関する権限はなく、水道料金も入ってこない。導入の判断は各自治体が行う。また、大規模災害時における応急給水や施設復旧などの対応についてはコンセッション事業者(民間企業)が実施可能と定められている(「水道法改正に向けて」厚生労働省)。

 先行する海外では水道料金高騰や水質悪化などのトラブルが相次いでいる。米アトランタでは1999年に民間企業が水道の運営権を取得したが、施設の維持費がかさんで水質が悪化し、4年後に再公営化された。水道事業はこの15年の間に30カ国以上で再公営化されている。南アフリカでは民営化後、料金高騰で支払えない約1000万人が水道を止められ、汚染した河川の水を使ってコレラが蔓延した。ボリビアでは料金が跳ね上がって暴動が発生した(産経ニュース 11月4日)。

 根本厚労相は「海外の問題事例を掌握」したと述べているが、4日の厚生労働委員会で厚生労働省が海外の事例を3件しか調べていないことが明らかになった。調査は2013年に実施されたもので、07年から10年の3例について調べているが、再公営化事例は00年から14年の間に35カ国で180件あった。しかも、この調査は厚労省が策定した「新水道ビジョン」に関するもので、法改正のためのものではなかったという。