なぜ地盤の選挙区でも大敗したのか
今から12年前の2005年8月8日の参院本会議、自民党内で30人もの造反議員が出て、郵政民営化法案が否決された。首相の小泉純一郎は間髪を入れず、衆院の解散に打って出た。それから間もなくの出来事である。
JR池袋駅南口に隣接する「ホテルメトロポリタン」3階の宴会場「富士の間」に、およそ500人が集った。都心の高級ホテルで参加費用が1人3000円という格安の立食パーティだ。高さ5.7メートルの宴会場では、クリスタルのシャンデリアの光が、参加者たちを包み込んでいた。宴を催したのが、デヴィ・スカルノだ。
郵政選挙の刺客第1号を応援する――。造反組の小林興起の対抗馬として、来る9月11日投開票の総選挙に出馬した小池百合子を支援するいわゆる勝手連の決起大会である。
「小池さんとは、90年代にジャカルタ行きのJAL便で隣り合わせに座りましてね。あのときは誰も知り合いのいない東京に身ひとつでいらして、選挙にお出になるというではありませんか。協力しましょうってことで、ホテルメトロポリタンで団結式を開いたんです。凄いでしょ、あなた、1週間で500人集めたのよ」
デヴィの自宅を訪ねると、胡蝶蘭に囲まれた部屋でそう振り返った。郵政民営化に執念を燃やしてきた小泉にとって、反対派の急先鋒だった小林に対する強力な女性候補は願ってもない話だった。勝負師と呼ばれる小池は、そこでいち早く手を挙げ、兵庫6区から東京10区に国替えして“刺客第一号”と持て囃された。
半面、彼女自身に新選挙区となる豊島区の人脈があるわけではない。実はこのとき地元の支援者集めに奔走した女性がいる。デヴィが続けた。
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source : 文藝春秋 2017年12月号