米国発「消費増税無用論」の真贋

中野 剛志 評論家
ニュース 経済

デフレ脱却のため財政赤字をもっと拡大すべきだ

中野剛志氏 ©文藝春秋

 昨今、MMT(現代貨幣理論、Modern Monetary Theory)なる耳慣れない経済理論が現われて、「自国通貨を発行する政府は、財政赤字を懸念しなくともよい」という議論を展開し、アメリカそして日本で一大旋風を巻き起こしている。

 最近になって登場した感があるが、実は、20世紀初頭のG・F・クナップ、J・M・ケインズ、J・A・シュンペーターらの洞察を原型とし、A・ラーナー、H・P・ミンスキーなどの業績も取り込んで、1990年代に、L・ランダル・レイ、S・ケルトン、W・ミッチェルといった経済学者、あるいは投資家のW・モズラーらによって、MMTという名で成立していた理論である。

 このような堂々たる系譜をもつMMTだが、主流派経済学とはまったく異なる理論体系をもった「異端」の学説だ。しかし、MMTは、主流派経済学の隆盛の陰で、伏流水のように脈々と研究が進められ、発展してきた。そんな異端の学説が、突然、脚光を浴びたのである。

 きっかけは、2019年1月に、アメリカの史上最年少下院議員(民主党)として話題のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員がMMTへの支持を表明したことだった。これが引き金となって、アメリカでMMTを巡る大論争が巻き起こった。この論争が日本にも飛び火したのである。

 折しも日本では、10月に消費税率の8%から10%への引き上げを予定しながら、景気の悪化によって増税への不安が高まっていたので、「財政赤字は心配ない」と主張するMMTを巡る議論が巻き起こり、国会でも論議される事態となったのだ。

貨幣は「商品」でなく「負債」

 このMMTを筆者は高く評価する者であるが、どんな理論なのか、その概要を解説しよう。

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source : 文藝春秋 2019年7月号

genre : ニュース 経済